いとま特例と事業者責任の境界線
いとま特例(法第26条第2項)は、やむを得ない事情により従事開始までに犯罪事実確認が間に合わない場合、従事開始後に確認を行うことを認める例外規定です。
しかし、遅延が事業者の責めに帰す事情による場合、特例の適用は認められません。その結果、従事開始日に確認義務違反が発生し、**認定取消し(法第32条第1項第3号)**の重大なリスクに直面します。
本記事では、ガイドラインに明示された「特例が認められない事例」に基づき、事業者が回避すべき4つの失敗要因と、求められる具体的な措置を解説します。
計画性の欠如による失敗(新規採用・人事慣行)
予見可能な欠員に対する計画採用の懈怠
具体例
定年退職など欠員が予見できたにもかかわらず、計画的な採用活動を行わなかった場合、特例適用は認められません。
求められる措置
- 年間スケジュール等の事務計画を作成
- 犯罪事実確認を期限までに実施できる執行体制を構築
- 欠員に対応した確認手続きを事前に組み込んだ採用計画を策定
慣行に基づく内示時期の遅延
具体例
従来の慣行に従い内示を異動直前に行った場合、従事開始直前の確認が遅れ、特例適用は認められません。
求められる措置
- 内示・異動の手続きを犯罪事実確認に必要な標準処理期間を確保できるよう計画
- 日本国籍者:最長1ヶ月、外国籍者:最長2ヶ月の処理期間を基準に実施
- 法令遵守を優先し、慣行に依存しない人事計画を策定
事務管理の不備による失敗(戸籍提出・組織再編)
従事者による戸籍提出遅延の放置
具体例
従事者が戸籍関連情報を提出せず、従事開始までに十分な余裕を確保できなかった場合、国の交付遅延による6ヶ月延長も認められません。
求められる措置
- 戸籍提出の重要性とスケジュールを事前に書面で通知
- 協力が得られない場合を想定し、事前同意や就業規則を整備
- 指導・懲戒を検討できる体制を構築
合併・承継時の確認準備の懈怠
具体例
吸収合併等の契約締結日から効力発生日まで十分な期間があったにもかかわらず、承継した現職者の犯罪事実確認を行わなかった場合、特例適用は認められません。
求められる措置
- 承継前から計画的に犯罪事実確認を実施
- 組織変更を証する書類を適切に保存
- 計画的実施の証拠を管理
「著しい支障」の要件を満たせない失敗
失敗要因
犯罪事実確認が完了するまでの間、代替業務への配置転換が可能であるにもかかわらず、**「直ちに当該業務を行わせなければ事業運営に著しい支障が生ずる」**として特例を誤適用した場合。
具体例
犯罪事実確認完了まで法人本部等でこどもと接しない業務に従事させることが可能であれば、特例は認められません。
求められる措置
- まず配置転換を検討し、特例は最終手段として適用
- 人事権の行使として代替業務への移動が可能か検討
- 労働法制上も配置転換を優先する義務を認識
まとめ:DBS法における管理体制と証拠の保存
いとま特例の適用回避には、単なる「急な事情」ではなく、事業者が法令に基づく計画的かつ誠実な努力を尽くしたかが問われます。
事業者が講じるべき対策
- 事前通知の徹底と業務命令化
- 戸籍提出等の協力義務を就業規則に明記
- 従事者に書面で通知し、提出遅延を事業者責任に帰さない防御線を構築
- 証拠の保存
- 特例適用の「やむを得ない事情」を証する書類(欠員通知、採用記録、組織変更契約書など)を整理・保管
- 報告徴収や立入検査時に提示可能な体制を整備
この「事業者の責め」を回避するための厳格な運用体制の構築が、認定事業者がこども性暴力防止法下で安定的に事業を継続する鍵となります。
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