日本版DBS 小規模事業者支援:情報管理措置における「最低限求められる措置」の実務解説

日本版DBSの書類整備を象徴する抽象イメージ(机上に並ぶ書類・印鑑・ファイル) FAQ

制度設計のジレンマ—厳格性と実行可能性

こども性暴力防止法(日本版DBS)では、犯罪事実確認の結果として得られる記録(犯罪事実確認記録等)は極めて機微性の高い個人情報として位置付けられています。これらの情報を取り扱う事業者には、法第11条および第14条に基づき、厳格な情報管理措置の実施が義務付けられています。

一方で、対象事業者は学校設置者等の大規模組織だけでなく、小規模な民間教育・保育事業者も含まれます。専門的で複雑な情報管理措置を小規模事業者が全て講じることは現実的に困難です。このジレンマを解消するため、制度設計上は「標準的措置」と「最低限求められる措置」の二段階の水準が設けられています。

本記事では、小規模事業者が特に満たすべき「最低限求められる措置」に焦点を当て、実務上のポイントを整理します。

二つの情報管理措置の水準と位置づけ

標準的措置(基本的水準)

標準的措置は、犯罪事実確認記録等の情報管理を行う事業者であれば、特別な事情がない限り実施されるべき基本水準の措置です。事業者は可能な限りこの水準を満たすことが求められます。

最低限求められる措置(小規模事業者配慮水準)

最低限求められる措置は、標準的措置の一部を緩和した水準で、小規模事業者の負担に配慮して設けられています。例外なく全ての対象事業者が施設・事業単位で満たす必要があり、その水準は個人情報保護法で求められる安全管理水準と同等またはそれ以上とされています。

「最低限求められる措置」が担保すべき管理要素

内閣府令で定められる情報管理規程には、以下の5つの要素を盛り込む必要があります。

1. 基本的事項

  • 犯罪事実確認書の内容の記録・保存は極力避ける
  • 犯罪事実確認記録等の取扱者は必要最小限に限定する

2. 組織的情報管理措置

事業者は情報管理の責任者を定め、組織体制として複数名でのチェック体制を確保することが求められます。

3. 人的情報管理措置

従事者に対する研修・訓練など、人的管理措置を実施することで、情報の適正な取扱いを徹底します。

4. 物理的情報管理措置

端末や書類の物理的な管理を行い、情報漏えいの防止対策を講じます。

5. 技術的情報管理措置

情報システムに関する技術的対策を整備し、電子的情報の不正アクセスや漏えいを防ぎます。

これら②~⑤の措置は、小規模事業者の実態に応じて具体化されることが想定されています。

デジタル化による負担軽減の工夫

最低限求められる措置の実効性を高めるため、制度設計にはシステム上の配慮が組み込まれています。

  • 閲覧原則の採用
    犯罪事実確認書は原則として関連システム上で閲覧するのみとし、転記や保存の必要を最小化。これにより、物理的・技術的管理負担が大幅に軽減されます。
  • 自動消去機能
    法で定める期限に応じて、システム内の犯罪事実確認記録等が自動で消去される機能を付加。小規模事業者が負担を感じやすい廃棄・消去義務(法第38条)の履行を支援します。
  • 最低2名体制の要件
    情報管理責任者を含め、2人以上で情報管理を行う体制を確保。複数名によるチェックにより、機微情報の適切な管理が担保されます。

最低限措置の遵守と監督体制

  • 定期報告義務
    事業者は最低限求められる措置の実施状況を年1回、国(こども家庭庁)に報告します。報告はシステム上のチェックボックス形式が基本です。
  • 是正命令の対象
    犯罪事実確認実施者等が法第11条または第14条に違反し漏えい等が生じた場合、内閣総理大臣は是正命令を発することが可能です。措置が講じられるまで、犯罪事実確認書の交付は行われません。

まとめ

最低限求められる措置は、小規模事業者の現実的運営能力に配慮しつつ、児童の安全確保という法の目的を達成するために設定された、犯歴情報管理の最低限水準です。事業者はこの水準を確実に満たすとともに、可能であればより強固な標準的措置の達成を目指すことが重要です。

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