日本版DBSの情報共有:「目的内利用」の境界線

日本版DBSの書類整備を象徴する抽象イメージ(机上に並ぶ書類・印鑑・ファイル) FAQ

目的外利用禁止の原則と内部共有の必要性

こども性暴力防止法(日本版DBS)は、犯罪事実確認記録等(確認書およびその情報に係る記録)を、防止措置の実施目的以外で利用したり第三者に提供することを原則禁止しています(法第12条)。

一方で、学校設置者等(例:教育委員会)が防止措置を適切に実施するためには、現場の学校と情報を共有する必要があります。たとえば、配置転換や児童との接触回避など具体的な防止措置を講じるには、情報共有が不可欠です。

このため、同一事業者内で、防止措置の検討・実施に必要な範囲で情報を共有する行為は、目的内利用として法違反に当たらないと明確化されています。本記事では、目的内利用の範囲、情報共有が許される関係者、そして事業者が負うべき情報管理責任について解説します。


同一事業者内での情報共有が目的内利用と見なされる理由

防止措置の検討・実施に必要な連携

法第6条の防止措置を実施する目的での利用は、目的内利用として認められます。
具体的には以下の措置が含まれます:

  • 配置転換などの雇用管理上の措置
  • 児童対象性暴力を防止する具体的措置(例:接触回避)

特に公立学校の場合、義務の主体は教育委員会ですが、防止措置の現場での実施や服務監督は学校が担当するため、情報共有は不可欠です。

共有が認められる具体的ケース

防止措置の検討・実施に当たり、同一事業者内(教育委員会と学校)で必要最低限の関係者間で犯罪事実確認記録を共有する場合は、目的外利用には当たりません。


「必要最低限の関係者」の範囲と組織体制

情報管理における体制の原則

犯罪事実確認記録等は高度に機微性の高い情報であるため、取扱者は必要最小限に限定されることが基本です。
「必要最低限の関係者」とは、防止措置の検討・実施に直接関わる以下の者を指します:

  • 組織の長
  • 人事責任者
  • 情報管理責任者
  • 現場の管理職など

同一事業者内での役割分担例

同一事業者内(本社・支社・各施設)で情報を共有する場合、役割は以下の通りです:

  • 本社(教育委員会):雇用契約に基づく雇用管理上の措置(配置転換等)を実施し、必要範囲で支社や各施設に情報提供
  • 各施設(学校):服務監督権に基づく措置(例:児童と1対1にさせない等)を実施
  • 情報提供の流れ:本社から施設へ情報提供を行う。異動等があった場合、施設間で直接提供せず、必ず本社等を経由する

情報共有における厳格な管理措置とリスク

不必要に情報を共有しない原則

共同認定や施設運営者が複数ある場合、防止措置がどちらかの組織内で完結する場合は、不必要に情報を共有しないことが求められます。
これは情報漏洩リスクを最小化するための重要な原則です。

目的外利用・第三者提供となる禁止事項

同一事業者内の共有が許容されるのは、防止措置の検討・実施に必要な範囲のみです。

  • 目的外利用の例:犯罪事実確認記録を人事評価、他の採用候補者の選考、別事業部門での情報共有に利用
  • 第三者提供の例:派遣元事業主や請負事業主に特定性犯罪事実の有無を提供

犯歴関連情報の追加的取得と管理

防止措置の検討・実施にあたり、確認書の情報だけでは不十分な場合、従事者本人との面談を通じて追加的に特定性犯罪事実関連情報を得ることは目的内利用に該当します。

ただし、これらの情報は極めて機微性が高いため、犯罪事実確認記録等と同等に厳格に管理する必要があります。
取得時には従事者本人の意思を尊重し、同意を強制せず、拒否したことを理由に不利益な取り扱いを行わないことが重要です。


まとめ

  • 教育委員会と学校等、同一事業者内での犯罪事実確認記録等の共有は、防止措置の実効性を確保する目的内利用として法的に認められている
  • 共有は必要最低限の関係者に限定され、情報管理規程に役割分担を明確化し、システム上のアクセス権限も最小限に設定する必要がある
  • 不必要に情報を共有しない「極力避ける」原則を徹底することが、情報漏洩リスクを最小化する鍵である
※執筆時点の情報です。最新の内容・詳細については直接お問い合わせください。

行政書士事務所 POLAIRE(ポレール)

お問い合わせ先
TEL:096-288-2679
FAX:096-288-2798
MAIL:polaire@sp-pallet.net
※3営業日以内にご連絡差し上げます。


営業時間(完全予約制)
火・水・金・土:10:00~19:00
月・木:10:00~12:00
※日曜・祝日は休業日です。
※お電話でのご相談は行っておりません。
※ご依頼内容により必要な手続きが異なるため、「金額だけ」をお伝えすることはできません。必ず対面またはオンラインでお話を伺ったうえで、お見積りをご提示いたします。


夜間オンライン相談(完全予約制)
毎週水・金曜日:20:00~21:00(オンライン対応のみ)
※日中にお時間が取れない方のための予約制相談です。
ご予約完了後、オンラインミーティングのURLをお送りします。

タイトルとURLをコピーしました
💬 無料相談はこちら