派遣先が抱える法的ジレンマ
日本版DBS(こども性暴力防止法)の実務において、派遣労働者を受け入れる派遣先は、**「安全確保義務」と「個人情報保護義務」**の狭間に立たされます。
特に、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めた場合に必要な「交代要請」や「業務変更」の判断は、法的に慎重な情報伝達が求められます。
派遣先が直面する二重の義務
- 安全確保措置の義務(法第6条)
児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めたときは、防止措置を講じなければなりません。これには、派遣労働者の業務変更や交代要請が含まれます。 - 第三者提供の禁止(法第12条)
犯罪事実確認の結果(特定性犯罪事実の有無など)を第三者に提供してはならず、派遣先が派遣元に「犯歴情報そのもの」を伝えることは違法となります。
この2つの義務が同時に存在するため、派遣先は「安全を守るために行動しつつ、情報の秘匿を守る」という、非常に繊細な運用が求められます。
犯歴情報を秘匿しながら交代を求める法的テクニック
情報伝達の原則:「おそれがある」との事実に限定
派遣先は、派遣元へ「犯罪事実」ではなく、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めたという事実のみを伝えなければなりません。
例文:
「こども性暴力防止法第6条に規定する児童対象性暴力等が行われるおそれがあると派遣先が認めたため、当該従事者について業務変更または交代を要請します。」
この表現は、犯歴情報を一切明示せず、法第12条の第三者提供禁止にも抵触しない安全な伝達方法です。
伝達のタイミング
派遣先は、状況を確認次第、以下の流れで行動します:
- 派遣先内部で暫定的な防止措置を実施(配置変更・業務制限など)。
- 速やかに派遣元に対し「おそれの認定事実」を通知。
- 契約上の交代要請条項に基づき、派遣労働者の交代または業務変更を要請。
この順序を徹底することで、情報漏えいの防止と制度遵守の両立が可能となります。
労働者派遣契約における「交代要請条項」の設計ポイント
派遣契約で明示しておくべき条項
派遣先が「おそれ」を認めた際に、派遣元へ労働者の交代や業務変更を求められる旨を明記しておく必要があります。
この条項は次の3つの役割を果たします。
- 派遣先が人事権を持たないことの法的補完
- 安全確保義務の履行根拠の明確化
- 偽装請負・不当指揮命令のリスク回避
請負契約の場合
請負の場合は、発注者が請負事業主に対し「おそれ」を伝え、当該者を委託業務に従事させないよう求める義務を明文化します。
この設計により、請負契約特有の独立性を損なうことなく、法的に適正な防止措置が取れます。
派遣元事業主が負う雇用責任と防止措置
不当解雇の禁止
派遣先からの交代要請や契約終了の通知を受けた場合でも、派遣元がその理由のみで労働者を解雇することは許されません。
これは労働契約法や労働者派遣法の趣旨からも明確です。
派遣元の対応義務
派遣元は、当該労働者の状況を確認し、必要に応じて以下の措置を講じます。
- こどもと接しない業務への配置転換
- 別の派遣先への派遣
- 一定期間の休業措置
- 懲戒処分を含む内部的な再発防止措置
これらの対応は、派遣元の雇用責任と防止義務の両立を示す重要な運用ポイントです。
まとめ:安全と法令遵守を両立する「伝え方の技術」
派遣先・派遣元の双方が協力し、「おそれ」の段階で迅速かつ適法に対応する仕組みを構築することが、DBS制度運用の鍵です。
派遣先は「犯歴を知らないまま、安全を守る」ための伝達技術を磨き、派遣元は「人権を守りながら再配置を行う」責務を果たすことが求められます。
※執筆時点の情報です。最新の内容・詳細については直接お問い合わせください。
行政書士事務所 POLAIRE(ポレール)
お問い合わせ先
TEL:096-288-2679
FAX:096-288-2798
MAIL:polaire@sp-pallet.net
※3営業日以内にご連絡差し上げます。
営業時間(完全予約制)
火・水・金・土:10:00~19:00
月・木:10:00~12:00
※日曜・祝日は休業日です。
※お電話でのご相談は行っておりません。
※ご依頼内容により必要な手続きが異なるため、「金額だけ」をお伝えすることはできません。必ず対面またはオンラインでお話を伺ったうえで、お見積りをご提示いたします。
夜間オンライン相談(完全予約制)
毎週水・金曜日:20:00~21:00(オンライン対応のみ)
※日中にお時間が取れない方のための予約制相談です。
ご予約完了後、オンラインミーティングのURLをお送りします。

