短期従事者における記録管理の新たな課題
日本版DBS(こども性暴力防止法)では、犯罪事実確認記録等の管理・廃棄が厳格に定められています。特に、短期ボランティアや有期契約の反復従事者に対しては、従事のたびに記録の廃棄と再取得を行う必要があり、事業者・従事者双方に大きな事務負担が生じるのが現実です。
その負担を軽減するための実務的手段として、「意向確認書面」の活用が注目されています。本稿では、この書面の法的意義・作成上の注意点・情報管理上の留意点を、行政書士の視点から解説します。
「意向確認書面」の法的意義と目的
犯罪事実確認記録等(犯罪事実確認書およびその記録)は、従事者が離職した日から30日が経過する日までに廃棄・消去しなければならないと定められています(法第38条第2項第1号)。
短期契約やボランティア活動では、業務終了のたびに記録を破棄・再取得する必要が生じますが、これを繰り返すことは実務上非効率です。そこで、再従事を予定する従事者の意向を文書で確認し、一定期間、記録を保有し続ける法的・実務的根拠とするのが「意向確認書面」です。
目的の厳格な限定
この書面は「離職」には該当しないと整理され、記録廃棄義務を免れるための純粋な情報管理上のツールとして位置づけられます。
したがって、雇用契約の継続や再雇用の約束を目的とするものではなく、あくまで法定期間内の情報保有を正当化するための書面であることを明確にする必要があります。
雇用リスク回避のための書面作成と説明義務
意向確認書面を作成する際には、書面の目的や性質を誤解されないようにすることが極めて重要です。誤った理解のもとで署名を得た場合、事後的に「雇用契約の成立を示す証拠」と誤認されるおそれがあります。
同意の任意性の確保
従事者の署名・同意が、再雇用や雇用契約の締結を意味するものと誤解されないよう、
- 「本書面は雇用契約書ではないこと」
- 「雇用契約の期間を示すものではないこと」
を明記し、口頭でも併せて説明することが適切です。
また、書面上に「再雇用を前提とする」「次回も勤務予定」などの文言を記載することは避け、雇用上の地位や期待を伴わない内容とすることが法的リスク回避の基本です。
「6月を上回らない範囲」での期間設定と期限管理
意向確認書面で定める記録保有期間は、原則として6ヶ月を上回らない範囲で設定すべきです。これは、長期間にわたる保有が従事実態と乖離し、個人情報保護の観点から不適切と評価されるおそれがあるためです。
期間管理体制の構築
6ヶ月を超えて従事する可能性がある場合には、期間経過時に自動的に書面更新を行う仕組みを内部体制として整備する必要があります。
このとき、更新を怠ると記録の不当保有に該当するおそれがあるため、システム的なリマインドや管理表の運用など、期限管理を徹底するプロセスを明文化しておくことが望まれます。
また、期間満了や従事者本人からの廃棄請求があった場合は、離職日から30日以内に廃棄・消去を行う義務が再び発生します。
意向確認期間中の厳格な情報管理義務
意向確認書面に基づいて保有が継続される期間中、犯罪事実確認記録等は法第14条に基づき、適正かつ厳格に管理しなければなりません。
廃棄の確実性の確保
期間満了や廃棄請求に応じて記録を処分する際には、復元不可能な方法での廃棄・消去が求められます。
- 紙媒体:シュレッダー処理または溶解処理
- 電子媒体:専用ソフトによる完全消去または物理破壊
これらの手順を情報管理規程に明記し、廃棄証跡を残すことが重要です。事業者が不適切な方法で記録を残存させた場合、法第38条違反となり、行政指導や認定取消しのリスクが生じます。
まとめ:実務における「意向確認書面」活用の鍵
「意向確認書面」は、短期従事者やボランティアを多く抱える事業者にとって、事務負担を軽減する有効な手段です。しかし、その運用には法的な明確化と説明責任が伴います。
- 雇用契約と誤解されない内容設計
- 6ヶ月以内の厳格な期間設定と更新体制
- 徹底した廃棄・消去の実行
これらを制度的に定着させることで、事業者はトラブルを未然に防ぎつつ、法令遵守と信頼性の両立を実現できます。
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