はじめに:危機対応から回復への長い道のり
性暴力の疑いが発覚した場合、まず最優先されるのは「被害児童の安全確保」と「加害者との接触回避」です。これは日本版DBS(こども性暴力防止法)が定める安全確保措置の基本的な理念でもあり、事業者は初動の段階で、適切な保護体制を整える責務を負います。
しかし、危機対応が完了したからといって支援が終わるわけではありません。性暴力による心的外傷(トラウマ)は長期間にわたって児童の心身に影響を及ぼす可能性があり、被害児童が再び安心して学び、生活できるようになるまでには、時間と継続的な支援が必要です。
本記事では、学校や事業所における中長期支援をどのように継続すべきか、特に転校・卒業といった環境変化の際に支援を途切れさせないための情報引継ぎの重要性について解説します。
法制度が求める「保護・支援」の目的と範囲
支援の目的と法的位置づけ
こども性暴力防止法における「被害児童等の保護及び支援のための措置」は、学校設置者等および認定事業者等が講じるべき「安全確保措置」の一部として位置づけられています。
その目的は、被害児童が再び日常を取り戻し、安心して教育や保育を受けられる環境を整えることにあります。単なる「一時的なケア」ではなく、児童の生活全体を支える包括的な支援が求められます。
支援の目標
支援のゴールは「心の回復」と「安心できる居場所の再構築」です。児童の気持ちに寄り添い、心理的・身体的なケアを行いながら、教育・保育等の場が再び「安全で安心な場所」となるよう取り組むことが求められます。
支援の継続性を守るための情報引継ぎ
転換期における支援継続の重要性
被害児童の回復は一朝一夕に進むものではありません。一定期間の支援によって落ち着きを取り戻したように見えても、環境の変化(転校・進学・卒業など)が再び不安やトラウマを呼び起こすこともあります。
このため、支援は「短期的な終結」ではなく、「児童の成長や環境変化に合わせて継続的に見守る」姿勢が不可欠です。
情報引継ぎの留意点
支援の継続を可能にするためには、転校・卒業などの際に、必要な支援情報を新たな所属先へ適切に引き継ぐことが求められます。
ただし、情報引継ぎにあたっては以下の点に十分留意する必要があります。
- 本人の同意を必須とする
情報引継ぎには、被害児童およびその保護者の明確な同意(インフォームドコンセント)が必要です。本人や家族の意向を尊重せずに情報を共有することは、二次被害の原因となり得ます。 - 共有内容を必要最小限にする
共有される情報は、児童が新たな環境で安心して生活を続けるために必要な支援内容や配慮事項に限定すべきです。被害の詳細や個人情報を過剰に共有することは厳に慎まなければなりません。 - 厳格な情報管理の徹底
支援情報は、犯罪事実確認記録等と同様に高い機微性を有する情報です。文書管理や閲覧制限など、組織としての情報管理体制を確立しておくことが重要です。
中長期支援を支える実践的な支援項目と専門機関連携
専門機関との連携と支援情報の提供
事業者は、被害児童やその保護者に対し、信頼できる支援機関や専門家へのアクセスを確保する責務があります。
具体的には、以下のような支援機関を積極的に案内し、必要に応じて連携を行います。
- ワンストップ支援センター(#8891)
医療・法的・心理的支援を包括的に提供する公的機関。被害発生直後だけでなく、中長期的な相談にも応じる。 - 公認心理師・臨床心理士等
被害児童の心理的ケアを専門的に担う存在。必要に応じて、継続的なカウンセリングや心理的支援を紹介する。 - 自治体の総合窓口
犯罪被害者支援を包括的に行う自治体窓口を紹介し、行政的支援制度の利用を促す。
継続的な見守りと保護者支援
被害児童を担当する職員(支援チーム)は、定期的に児童の様子を確認し、心理的な負担が再燃していないかを把握します。
また、保護者も被害の影響を強く受けていることが多く、支援の対象に含める必要があります。保護者の不安や怒りを受け止め、専門機関との橋渡しを行うなど、家族全体の回復を支える姿勢が大切です。
まとめ:切れ目のない支援体制を実現するために
性暴力被害児童への対応は、事案の収束ではなく「児童の回復」を最終目的とするものです。
教育・保育事業者には、転校・卒業といった環境の変化に際しても、支援が途切れないよう最大限の努力を行う責務があります。
そのためには、
- 中長期的な支援の計画と体制整備
- 本人同意に基づく適切な情報引継ぎ
- 支援情報の厳格な管理
- 平時からの外部機関連携
といった取組が不可欠です。
地域社会と専門機関が連携し、「被害児童がどこにいても安心して過ごせる環境」を継続的に支えることこそが、日本版DBSの理念を実現するための第一歩です。
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