※本記事は、令和7年12月22日現在で公表されている「こども性暴力防止法(日本版DBS)」のガイドライン(案)を基に作成しています。将来的な法令・政省令・ガイドラインの確定や改訂により、運用や解釈が変更される可能性があるため、個別事案については最新の公的資料や専門家への確認を前提としてください。
日本版DBS(こども性暴力防止法)制度では、年1回の定期報告と、漏えい等が発生した場合の重大事態の即時報告が義務付けられています。
全く新しいことをするわけですから、実務の現場では「研修を実施したか」「犯歴確認を行ったか」以外に、何をどこまで報告すべきなのか分かりにくいかもしれません。
本制度の報告は、単なる実施有無の確認すれば良いものではなく、
制度が日常的に適切に機能しているかを継続的に確認するためのものである為、
早めの理解が必要です。
報告事項は大きく次の4つに分類されます。
1.犯罪事実確認に関する詳細な報告事項
犯罪事実確認については、「確認した」という事実だけでは足りません。
誰を、いつ、どのような状態で確認したのかというプロセス全体が報告対象となります。
主な報告内容
- 対象者の一覧とステータス
報告期間中に対象業務に従事した全員について、現在の従事状況や離職の有無を整理します。 - 確認期限と実施日
法定の確認期限と、実際に犯罪事実確認書を受領・確認した日を記録します。 - いとま特例(事後確認)の適用状況
急な欠員等により事後確認とした場合には、
その人数、やむを得ない事情の具体的内容、
さらに確認完了までの間に講じた「一対一にさせない」などの代替措置を報告します。 - 特定性犯罪事実該当者の数
犯歴が確認された人数と、基準日時点で対象業務に従事しているか否かを区別して整理します。
2.安全確保措置の実施状況
(主に認定事業者に課される義務)
認定を受けた民間事業者は、安全確保措置の実施状況を定期的に報告します。
これは、制度が「机上のルール」にとどまらず、現場で機能しているかを確認するためのものです。
① 早期把握措置
- 日常的な観察の実施状況
- 年1回以上の定期面談・アンケートの実施
- 異変を察知した場合の報告・対応ルールの周知状況
② 相談体制
- 相談員の選任状況
- 内部相談窓口の設置
- 警察やワンストップ支援センター等、外部相談窓口の周知状況
③ 事案発生時の対応記録(発生時のみ)
実際に事案が発生した場合には、
- 調査を実施した件数
- 被害児童等への「接触回避」や「支援機関情報の提供」の実施状況
- 対象業務から外す等の防止措置を講じた件数
を具体的に記録・報告します。
3.情報管理措置の状況
犯罪事実確認記録は、極めて機微性の高い情報です。
そのため、「どのように守っているか」も報告対象となります。
主な報告内容
- 組織体制
管理責任者・担当者の任命状況、自己点検や監査の実施状況。 - 物理的・技術的対策
閲覧区域の限定、PCのウイルス対策、OSのアップデート、不要な記録の消去状況。 - 人員要件(認定事業者)
情報管理責任者を含め、事業に従事する者が2名以上確保されているか。
4.重大事態の即時報告(定期報告とは別)
定期報告とは別に、以下の事態を知った場合には直ちに報告が必要です
(目安として3〜5日以内)。
即時報告が必要な事態
- 犯罪事実確認記録等の漏えい・滅失・毀損、またはそのおそれ
- 法に反する第三者提供
- 防止措置検討のために聴取した、より詳細な特定性犯罪事実関連情報の漏えい等
保育園・認定こども園など「義務事業者」の報告の考え方
保育園や認定こども園等の義務事業者は、認定事業者とは報告の枠組みが異なります。
1.報告先の分担
- こども家庭庁への報告
- 犯罪事実確認(Vetting)の実施状況
- 情報管理措置の状況
- 所轄庁(都道府県・市区町村)への報告
- 安全確保措置(早期把握、相談、調査、保護・支援、研修)の実施状況
これは、安全確保措置の監督が、児童福祉法等の業法に基づき、
日常的に指導監査を行う所轄庁の権限に属しているためです。
2.実務上の留意点
- 報告時期は、可能な限りこども家庭庁への定期報告と同時期に行うことが推奨されています。
- 業法に基づく報告であっても、「こども性暴力防止法関連システム」や既存の監査様式を用いることが可能です。
- 所轄庁は、定期報告に加え、実地監査においてアンケート原本や研修記録等を直接確認することが想定されています。
まとめ
この報告制度が求めているもの
日本版DBSの報告制度は、
「犯歴確認や研修を実施したか」を問うだけの仕組みではありません。
日常の観察、相談体制、情報管理、そして事案発生時の対応まで含め、
安全を維持する仕組みが、継続的に機能しているかを確認するための制度です。
その意味で、年1回の報告は、
施設や事業者が自らの体制を点検し、説明責任を果たすための重要なプロセスといえます。
日本版DBSの対応、「うちの場合はどうなる?」と感じたら
日本版DBS(こども性暴力防止法)は、施設の種別・運営形態・職員体制によって、必要な対応が異なります。
保育園・認定こども園・障害福祉施設といった義務対象施設ははもちろん、スポーツクラブ、学習塾などの認定対象事業所でも、「どこまで準備すればよいのか分からない」という声を多く伺います。
- 就業規則やマニュアルは、このままで足りるのか
- 研修や演習は、どこまで求められるのか
- 自園・自施設の運営形態で、注意すべき点はどこか
施設ごとの状況に応じた整理が必要な段階です。

