家庭的保育事業(保育ママ)と日本版DBSの厳格な法的構造

※本記事は、令和7年12月22日現在で公表されている「こども性暴力防止法(日本版DBS)」のガイドライン(案)を基に作成しています。将来的な法令・政省令・ガイドラインの確定や改訂により、運用や解釈が変更される可能性があるため、個別事案については最新の公的資料や専門家への確認を前提としてください。


家庭的保育事業(いわゆる保育ママ)は、定員が5人以下であることから
「目が行き届く」「小規模だからリスクは低い」と受け止められがちです。

しかし、日本版DBS(こども性暴力防止法)の制度設計において、
事業規模の小ささは一切の免責理由になりません。

家庭的保育事業であっても、法律上は明確に
**「学校設置者等(義務対象)」**に該当し、
定められた手続きを怠ることは許されない構造になっています。

本コラムでは、
家庭的保育事業が日本版DBSの手続きを行わなかった場合に生じる
法的制裁と実務上のリスク
そして小規模施設だからこそ整えておくべき就業規則・情報管理措置について整理します。


家庭的保育事業も日本版DBSの義務対象である理由

家庭的保育事業は、児童福祉法に基づく認可事業です。
そのため、日本版DBSでは、保育所や認定こども園と同様に
**「学校設置者等」**として位置付けられています。

制度上は、

  • 定員の多寡
  • 職員数
  • 施設の規模

といった事情は考慮されていません。

「少人数だから目が届く」「家庭的だから安心」という現場感覚と、
法が前提としているリスク管理の考え方には、明確なズレがあります。


手続きを怠った場合に科される5つの重大な制裁

行政処分:認可取消し・事業停止

日本版DBS法の施行に伴い、児童福祉法が改正されました。
本法に基づく命令や是正指示に違反した場合、
それは児童福祉法上の運営基準違反とみなされます。

改善命令に従わなければ、
都道府県知事や市町村長により
事業認可の取消しや事業停止が命じられる可能性があります。


社会的制裁:事業者名の公表

犯罪事実確認(Vetting)の義務違反が認められた場合、
こども家庭庁は、

  • 事業者名
  • 所在地
  • 違反内容
  • 対象人数

などをインターネット上で公表します。

これは単なる注意喚起ではなく、
社会的信用を大きく損なう措置です。
保護者からの信頼を回復することは極めて困難になります。


新規採用ができなくなるリスク

是正命令に従わない場合、
犯罪事実確認書の交付が停止されます。

日本版DBSでは、
「確認を終えるまで従事させてはならない」
という原則があるため、交付停止は、

新しい職員を一切採用できない状態
を意味します。

家庭的保育事業では、欠員が出た瞬間に
事業継続そのものが困難になるため、
これは事実上の業務停止に近い状態です。


刑事罰・罰金

一定の義務違反については、刑事罰が科されます。

  • 帳簿の不備や虚偽記載:50万円以下の罰金
  • 犯歴情報の漏えい・不正利用:
     1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

小規模事業であっても、
個人責任が重く問われる設計となっています。


運営上の実務デメリット

  • 法定事業者マークを掲示できない
  • いとま特例(事後確認)が利用できない

結果として、緊急時の柔軟な運営が不可能になります。


就業規則を整えていないことの致命的リスク

日本版DBSの運用において、
就業規則は単なる労務書類ではありません。

**「防止措置を適法に行うための法的基盤」**です。

就業規則が未整備、または不十分な場合、
事業者は次のような状況に陥ります。

  • 懲戒処分や配置転換の根拠がない
  • 内定取消しや解雇が無効とされるリスク
  • 犯歴確認手続きへの協力を命じられない

つまり、
こどもを守るために動きたくても、法的に動けない状態になります。


就業規則等にあらかじめ定めるべき事項

トラブルを防止するため、
就業規則や服務規律を定めた文書には、
少なくとも次の事項を明記しておく必要があります。

  • 不適切な行為の定義と禁止
  • 犯罪行為・処罰歴が生じた場合の報告義務
  • 犯罪事実確認(Vetting)への協力義務
    (戸籍等の提出を含む)

小規模施設であっても、
これらを文書化していなければ、
防止措置を講じた事業者側が
義務違反として処分対象になるという逆転現象が起こります。


情報管理措置の不備が招く「実質的な営業停止」

システム利用停止という最大のリスク

情報管理規程を提出しなければ、
犯罪事実確認システム自体を利用できません。

是正命令を無視すれば、
交付停止が続き、採用は完全に凍結されます。


小規模施設に求められる「記録を残さない」対応

ガイドライン案では、
犯罪事実確認書を別途保存することを
極力避けるよう求めています。

  • システム内での閲覧のみにとどめる
  • 紙・電子ファイルで保存しない
  • 申請番号と氏名の対応表を分離管理する

これは手抜きではなく、
最も実効性の高い情報漏えい防止策です。


秘密保持義務は「個人」にも及ぶ

情報管理責任者や担当者は、
退職後であっても秘密保持義務を負います。

違反すれば、
個人に対して刑事罰が科される可能性があります。


防止措置規程は園を守る「盾」になる

根拠のない解雇や配置転換は、
労働契約法上「権利濫用」として無効とされるリスクがあります。

一方で、
防止措置規程を整備し、
手続に沿って対応した記録を残しておけば、

  • 防止措置の客観的合理性
  • 手続的相当性

を確保することができます。

これは、後の労務紛争から
園そのものを守る盾になります。


まとめ

家庭的保育事業は、
こどもと極めて近い距離で関わる事業形態であるからこそ、
日本版DBSにおいて最も厳格な安全管理が求められています

制度を知っているだけでは足りません。
適法に動ける体制を事前に整えているかが、
事業の継続と信頼を左右します。

小規模で目が行き届いている環境であっても、
「後から何とかする」は通用しません。施行前の今が取り組みを開始すべき時期です。


家庭的保育事業・小規模保育事業に特化した
日本版DBS対応(就業規則※・規程整備・実務運用)について、
行政書士の立場から実務に即した整理を行っています。
※就業規則に関しては、労働問題に強い弁護士の最終チェックを受けることを強くお勧め致します。弊所では弁護士のご紹介まで対応致しますので、お気軽にご相談下さい。

「自分の園では何を整えればよいのか分からない」という段階でも構いません。
お気軽にご相談ください。

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