【事業者向け】日本版DBSの安全確保措置とは?保育・福祉現場の実務ポイント

日本版DBS制度の概要を象徴する抽象イメージ(法律書と議事堂のイラスト) 事業者の皆様へ

日本版DBS(こども性暴力防止法)制度において、**犯罪事実確認(Vetting)**は重要な入口ですが、それだけで性暴力を防げるわけではありません。

本制度が事業者に求めているのは、
日常の予防から、異変の察知、事案発生時の対応までを含めた組織的な防護体制です。
これが「安全確保措置」です。

安全確保措置は、

  • こどもを被害から守るため
  • そして同時に、適切な指導を行っている従事者を、不当な疑念やトラブルから守るため
    に設計されています。

では、次に安全確保措置の仕組みをみていきましょう。

柱(フェーズ)目的・キーワード具体的なアクション例
第1の柱|未然防止火種を作らない
(環境・ルールの整備)
・密室、死角の解消
・私的連絡(SNS等)の禁止
・就業規則への明記
第2の柱|早期把握異常を検知する
(相談・観察)
・子供への定期アンケート
・「#8103」など外部窓口の周知
・職員間の相互チェック
第3の柱|事案発生被害拡大を防ぐ
(緊急プロトコル)
・加害疑い職員との接触回避
・独自調査せず警察へ通報
・証拠の保全(録画等)

第1の柱|未然防止(火種を作らない日常ルール)

「不適切な行為」の明確化と周知

性暴力は、ある日突然発生するものではなく、
多くの場合、**「不適切だが曖昧な行為」**の積み重ねから始まります。

以下のような行為は、あらかじめルールとして明文化し、
就業規則・服務規律に組み込むことが求められます。

▼ 就業規則で禁止すべき「不適切だが曖昧な行為」の例

  • 私的な連絡: SNSや個人の連絡先を交換する行為
  • 不要な接触: 業務上必要のない身体接触やスキンシップ
  • 密室対応: 扉を閉め切った部屋で二人きりになること
  • 死角での活動: 倉庫やカーテンの裏など、管理者の目が届かない場所での個別対応

物理的環境の整備

行為者の意思に頼るのではなく、
「できない環境」を作ることが最大の抑止力になります。

  • 死角を生まないレイアウト
  • 面談室・保育室の視認性確保
  • 必要に応じた防犯カメラの設置

全従事者への継続的研修

「これくらいなら大丈夫」という認知の偏りを防ぐため、
以下を組織全体で共有します。

  • こどもの権利
  • 同意と境界線(バウンダリー)の考え方
  • 不適切行為がもたらす影響

第2の柱|早期把握と相談(異常を検知するセンサー)

日常観察と変化の察知

こどもの心身や行動の小さな変化を見逃さないためには、
一人の職員に依存しない「複数の目」が不可欠です。

面談・アンケートの工夫

定期的に、こどもの声を聞く機会を設けます。
特に、以下の点に配慮が必要です。

  • 未就学児
  • 障害のあるこども
  • 自ら言葉で訴えることが難しい場合

イラストや選択式ツールなど、特性に応じた工夫が求められます。

相談窓口の設置と周知

事業者内部の窓口だけでなく、
外部相談窓口の存在を必ず周知します。

  • 警察
  • 児童相談所
  • 専門相談機関

「一人で抱え込ませない」ことが、制度の前提です。


第3の柱|事案発生時の対応(緊急プロトコル)

初期対応と接触回避

疑いが生じた段階で最優先すべきは、
被害児童の安全確保です。

  • 加害が疑われる従事者との即時接触回避
  • 自宅待機命令・配置転換等の措置

迅速かつ公正な調査

  • 録画・記録など客観的証拠の保全
  • 二次被害や記憶の汚染を防ぐため、むやみな聴き取りは行わない

関係機関との連携

事業者だけで解決しようとせず、
速やかに警察や所轄庁へ相談・通報します。

被害児童の保護・支援

  • 専門機関の情報提供
  • 誠実で継続的な相談対応

こどもが日常を取り戻すことを最優先とします。


経営者が忘れてはならない「土台」|ルールの明文化

安全確保措置を実効性あるものにするためには、
就業規則・内部規程の整備が不可欠です。

  • 不適切行為への処分根拠
  • 犯歴確認への協力義務
  • 配置転換・解雇の法的根拠

これらが未整備のままでは、
いざという時に行った措置が無効と判断されるリスクがあります。


警察との関わり方|「外部窓口」と「専門機関」

👮‍♀️ 警察・専門機関との連携 4つのポイント

  1. 外部窓口の周知 施設内だけでなく「#8103(性犯罪被害相談電話)」など、子供が直接SOSを出せる番号を掲示する。
  2. 疑いがある時の初動 事業者は無理に聴き取り(犯人探し)をせず、速やかに警察へ相談し、二次被害を防ぐ。
  3. 調査の主導権 内部調査は警察の助言に従って行う(証拠隠滅や口裏合わせを防ぐため)。
  4. 安全確保の判断 「自宅待機」や「配置転換」が妥当かどうか、警察等の客観的な助言を判断材料にする。

おわりに|透明性の高い運営が信頼を築きます

経営者が忘れてはならないこと 安全確保措置を実効性あるものにするためには、**就業規則・内部規程の整備(ルールの明文化)**が不可欠です。これらが未整備のままでは、いざという時に行った「配置転換」や「解雇」が無効と判断されるリスクがあります。

「性暴力を決して許さない」という文化を組織全体で共有すること。 それこそが、こどもにとって最も安全な居場所をつくる基盤となります。

Q
「安全確保措置」とは、具体的に何をすればいいのですか?
A

単に犯罪歴を確認するだけでなく、「被害防止のための研修」「相談・通報体制の整備」「採用時の面談」、そして**「死角の解消(物理的な環境整備)」**など、性被害を未然に防ぐための具体的な対策を講じることが求められます。

Q
民間の学習塾やスポーツクラブでも、この措置は義務ですか?
A

民間事業者の場合は**「任意」となります。ただし、日本版DBSのシステムを利用して性犯罪歴を確認するためには、国から「適合認定」を受ける必要があり、その認定の条件として「安全確保措置」の実施が必須**となります。

Q
どのような準備から始めればよいですか?
A

まずは自社の中で「子どもと接する業務」の範囲を明確にすることから始めましょう。その上で、就業規則などの社内規定の見直しや、相談窓口の設置、パーティション配置の見直しなど、ハード・ソフト両面での確認をおすすめします。

※補足

※本記事は、令和7年12月時点の日本版DBS(こども性暴力防止法)ガイドライン案を基に整理しています。
制度の正式施行・最終ガイドラインの公表により、内容が変更される可能性があります。

日本版DBSの対応、「うちの場合はどうなる?」と感じたら

日本版DBS(こども性暴力防止法)は、施設の種別・運営形態・職員体制によって、必要な対応が異なります。

保育園・認定こども園・障害福祉施設といった義務対象施設ははもちろん、スポーツクラブ、学習塾などの認定対象事業所でも、「どこまで準備すればよいのか分からない」という声を多く伺います。

  • 就業規則やマニュアルは、このままで足りるのか
  • 研修や演習は、どこまで求められるのか
  • 自園・自施設の運営形態で、注意すべき点はどこか

施設ごとの状況に応じた整理が必要な段階です。

👉 日本版DBS(こども性暴力防止法)に関するご相談はこちら

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