日本版DBS(こども性暴力防止法)が定める「児童対象性暴力等」の定義を解説

※この記事はこども家庭庁が公表しているガイドラインを元に作成しています。
こども性暴力防止法の概要も合わせてご確認ください。

1.はじめに:こども性暴力防止法が目指すもの

こども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS)は、
教育・保育をはじめとするこどもと関わる現場において、
性暴力を未然に防止し、こどもの権利と尊厳を守る社会の実現を目的としています。

この法律では、単に「犯罪を起こした人を排除する」ことだけでなく、
こどもに対して支配的・優越的な立場に立つ事業者に対し、
次のような重い責務を課しています。

  • 性暴力を未然に防止する責務
  • 被害が生じた場合に、こどもを適切に保護する責務

その前提として、まず正確に理解しておくべきなのが、
「児童対象性暴力等」の定義です。


2.「児童対象性暴力等」の定義

―― 誰が、どのような行為の対象となるのか

対象となる「児童等」

本制度において保護の対象となる「児童等」には、
以下の者が含まれます。

  • 18歳未満の未成年者
  • 高等学校の生徒
  • 高等専門学校(1~3年生)の生徒
  • 専修学校高等課程の生徒 など

いわゆる「小さなこども」だけでなく、
高校生相当年齢までを含む広い範囲が対象となっている点が重要です。

定義の広がり

この定義は、従来の「教員性暴力等防止法」における考え方を基本としつつ、
高等専門学校等の生徒に対する行為が新たに加えられています。

その結果、教育・保育分野に限らず、
こども・若年者と関わる多くの事業者が制度の対象となっています。


3.物理的接触だけではない「性暴力」

―― 5つのカテゴリー

ガイドラインでは、防止すべき「児童対象性暴力等」を
次の5つのカテゴリーに分類しています。

🟥 ① 性交等・わいせつ行為

  • (刑法犯そのもの。問答無用でアウト)

📷 ② 盗撮・覗き

  • 更衣室やトイレへのカメラ設置、下着の撮影など。

📱 ③ SNS・自撮り要求【重要】

  • 「自画撮り」を送らせる行為。接触がなくても性暴力です。

🖐️ ④ 身体接触(セクハラ)

  • お尻を触る、抱きつくなど、不快感を与える接触。

🗣️ ⑤ 言葉の暴力・嫌がらせ

  • 性的な冗談、容姿への執拗な言及など。

4.深掘り:SNSによる「自撮り要求」と「悪質セクハラ」

SNSによる「自撮り要求」

刑法第182条第3項では、
わいせつの目的で、16歳未満の者に対し、性的な姿態を撮影した映像の送信を要求する行為
が処罰対象とされています。

このような行為は、
実際に画像が送信されたかどうかにかかわらず
「児童対象性暴力等」に直結する行為と位置付けられています。

加害者のメッセージ例
加害者のメッセージ例

誰にも内緒だよ。今の服を脱いだ写真、先生にだけ送って?🥺

悪質なセクシュアル・ハラスメント

直接的な身体接触がなくても、

  • 性的な言葉の投げかけ
  • こどもを不快にさせる性的な話題
  • 繰り返される不適切な言動

などにより、こどもの心身に有害な影響を与える場合、
重大な加害行為とみなされます。

デジタル技術の悪用

さらに、

  • 体液をかける行為
  • ディープフェイクポルノの作成・拡散

といった行為についても、
内容に応じて本定義に該当すると整理されています。


5.正当な業務との境界線

✅ 正当な業務(セーフ)⚠️ 不適切な行為(アウトの予兆)
・排泄介助、おむつ交換
・怪我の手当、湿布を貼る
・体育指導での身体補助
・用もないのに膝に乗せる
・特定の園児とだけキスをする
・人気のない場所で着替えさせる

「不適切な行為」への注意

一方で、

  • 業務上必要とは言い切れない行為
  • 境界が曖昧な行為が継続・発展する場合

これらは、
性的手なずけ(グルーミング)につながるリスクを孕みます。

そのため、
「性暴力」そのものではなくても、
「不適切な行為」として別途厳格な管理対象とされます。


ここがポイント

  1. 非接触も対象: 体に触らなくても、言葉や写真要求は「暴力」になる。
  2. 同意は無効: こどもが同意していても、大人の責任は免れない。
  3. SNSは証拠になる: デジタルタトゥーとして残るリスクを認識させる。

6.まとめ:こどもに対する性暴力を決して許さない社会へ

事業者は、

  • 「児童対象性暴力等」の定義を正しく理解すること
  • その内容を服務規律や内部ルールに反映させること
  • 従事者への継続的な教育を行うこと

が求められています。

身体的な接触がないSNS上の行為や言葉によるハラスメントも含め、
「こどもの尊厳を傷つけるあらゆる行為」を排除する姿勢こそが、
制度の根幹にあります。

見えない場所での加害も想定した備えを、
今から着実に進めていくことが重要です。

Q
園児が可愛くて、つい頬にキスをしてしまいました。これも性暴力ですか?
A

日本版DBSの定義上、直ちに性犯罪とならない場合でも、不適切な行為として厳しく問われる可能性があります。特に「特定の児童だけにする」「唇へのキス」などは、グルーミングの予兆とみなされるため、組織として禁止すべきです。

Q
職員が個人のスマホで園児の写真を撮ることは問題ですか?
A

大変危険です。「盗撮(カテゴリー④)」を疑われるリスクがあるだけでなく、画像流出のリスクもあります。業務用のカメラのみを使用し、個人の端末での撮影は禁止(持ち込み制限)にするのが安全管理の基本です。

Q
生徒からSNSで個人的な相談を受けました。返信してもいいですか?
A

原則として禁止すべきです。密室でのやり取り(DM)は「閉鎖性」が高く、トラブルの元です。「相談は学校で聞くね」「公式のアカウントに連絡してね」と返し、個人的な繋がりを持たないことが、あなた自身を守ることになります。

日本版DBSの対応、「うちの場合はどうなる?」と感じたら

日本版DBS(こども性暴力防止法)は、施設の種別・運営形態・職員体制によって、必要な対応が異なります。

保育園・認定こども園・障害福祉施設といった義務対象施設ははもちろん、スポーツクラブ、学習塾などの認定対象事業所でも、「どこまで準備すればよいのか分からない」という声を多く伺います。

  • 就業規則やマニュアルは、このままで足りるのか
  • 研修や演習は、どこまで求められるのか
  • 自園・自施設の運営形態で、注意すべき点はどこか

施設ごとの状況に応じた整理が必要な段階です。

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