2026年12月25日に施行される「こども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS)」は、保育園・認定こども園をはじめとするこどもと日常的に接する施設において、避けて通れない制度対応となります。
しかし、この法律は「特定の人物を排除するため」だけの制度ではありません。
むしろ本質は、日々こどもと向き合い、保育の現場を支えている圧倒的多数の誠実な保育職員を守ることにあります。
制度を正しく整えることで、
・あらぬ疑いをかけられない
・現場の判断を個人の責任にしない
・安心して保育に専念できる
そうした環境を、園全体の「仕組み」として守ることが可能になります。
行政手続きと権利義務の専門家である行政書士の立場から、保育園・認定こども園が今すぐ優先して整えるべき4つの実務ポイントを解説します。
1.「不適切な行為」のルール化は、保育職員を迷いと冤罪から守る
日本版DBSでは、性暴力そのもののみならず、それにつながるおそれのある「不適切な行為」への対応が求められています。
特に保育の現場では、
・身体的接触
・声かけ
・個別対応
などが日常的に発生するため、判断基準が曖昧なままでは、職員が常に不安を抱えることになります。
そのため、各園の実態に応じて、
- 園児との私的なSNS交換の禁止
- 密室での一対一保育を避ける運用
- 業務上必要な場合の例外ルールの明確化
といった基準を具体的に文書化しておくことが重要です。
これにより、職員が無自覚にグレーゾーンへ踏み込むことを防ぐだけでなく、万が一トラブルが生じた場合にも、職員を守る客観的な根拠となります。
2.客観的な記録(防犯カメラ等)は、保育職員の潔白を証明する
防犯カメラの設置や巡回体制の整備は、職員を監視するためのものではありません。むしろ保育職員を守るための「証拠」として機能します。
保育現場では、第三者の目が届きにくい場面も多く、疑いが生じた際に、当事者の証言だけでは事実確認が困難になるケースがあります。
- 映像による客観的記録
- 巡回記録や業務日誌
これらがあることで、冷静かつ適切な事実認定が可能になります。
同時に、
- 映像を閲覧できる責任者を限定する
- 保存期間を定め、一定期間後に消去する
といった厳格な運用ルールを事前に定め、職員へ丁寧に説明しておくことで、プライバシーへの不安を軽減し、安心して保育に集中できる環境が整います。
3.厳格な情報管理は、保育職員のプライバシーを「金庫」で守る
特定性犯罪前科に関する情報は、極めて機微性の高い個人情報です。
日本版DBSでは、この情報を厳重に管理し、守ることが園の義務として明確に定められています。
- 情報を閲覧できるのは必要最小限の責任者のみ
- 離職時、または確認から5年経過後は
30日以内に復元不可能な方法で廃棄・消去 - 不正な漏えいには拘禁刑や罰金等の刑事罰
つまり、保育職員の過去の情報がいつまでも園に残り続けることはありません。
法律そのものが、職員のプライバシーを守るための強力な抑止力として機能します。
4.公正な調査手続と、就業規則という「園の防衛ライン」
万が一、保育職員に関して疑いが生じた場合でも、職員の人権を守るプロセスが前提となります。
- 逮捕段階でも、判決までは加害者と断定しない
- 推定無罪を尊重した公正・中立な調査
- 懲戒処分を検討する際には、
原則として本人に弁明の機会を与える
これらを就業規則や誓約書に明確に位置づけておくことは、園の一方的な判断によるトラブルを防ぎ、保育職員を守る防衛ラインとなります。
同時に、園として職員に期待する行動基準を明確に示すことで、健全な職場環境の維持にもつながります。
まとめ|「安全な園」であることは、職員の信頼から生まれる
日本版DBSへの適切な対応は、所轄庁によるウェブサイトでの公表や、施設への**「法定事業者マーク」**の表示を通じて、
その園で働く保育職員が「国に認められた適格者である」という信頼を可視化することにつながります。
これは、保護者からの信頼だけでなく、職員自身が安心して働ける園づくりにも直結します。
私たち行政書士は、情報管理規程の策定をはじめとする日本版DBSに対応したコンプライアンス体制の設計や、権利義務に関する書類作成を通じて、
保育園・認定こども園がこどもにとっても、職員にとっても、安全な園であることを「仕組み」で支援します。
なお、就業規則の改定や人事対応については、社会保険労務士や弁護士と連携して進めることが重要です。
まずは
GビズIDの確認と、就業規則の改定、現職保育職員への丁寧な制度説明から着手し、
園と職員の信頼関係を、より強固なものにしていきましょう。
日本版DBSの対応、「うちの場合はどうなる?」と感じたら
日本版DBS(こども性暴力防止法)は、施設の種別・運営形態・職員体制によって、必要な対応が異なります。
保育園・認定こども園・障害福祉施設といった義務対象施設ははもちろん、スポーツクラブ、学習塾などの認定対象事業所でも、「どこまで準備すればよいのか分からない」という声を多く伺います。
- 就業規則やマニュアルは、このままで足りるのか
- 研修や演習は、どこまで求められるのか
- 自園・自施設の運営形態で、注意すべき点はどこか
施設ごとの状況に応じた整理が必要な段階です。

