【学校法人・民営保育所】教員・保育士DBと「日本版DBS」は別物!民営の義務事業者が今すぐ並行して体制整備を進めるべき理由

2026年12月25日の「こども性暴力防止法(日本版DBS)」の施行まで、残り半年となりました。

現在、私立学校を運営する学校法人や、民営の認可保育所・認定こども園を運営する事業者様の間で、実務上極めて危うい「致命的な誤解」が広がっています。

「うちは採用時に文科省の教員DB(特定免許状失効者管理システム)を確認しているから、日本版DBSの対応は後回しで大丈夫だろう」 「保育士の特定登録取消者管理システムが整備されれば、自動的にカバーされるのでは?」

もし、このように考えて準備を怠っているのではあれば、組織にとって非常に危険な状態です。

既存のデータベースと日本版DBSは、目的も、対象も、実務上の運用フローも「全く異なる二本の柱」です。本記事では、民営の義務事業者が今すぐ並行して進めるべき「2体制整備」のリアルと、混同が生む致命的なリスクについて、行政書士が解説します。

1. 【確認する中身の違い】行政処分歴と刑事罰(前科)は重複しない

第一の誤解は、「調べる情報が同じである」という勘違いです。既存のデータベースと日本版DBSは、情報の性質が根本から異なります。

重大なポイントは、「刑事罰を受けていなくても行政処分を受けているケース」や、その逆のケースが実際に存在するという点です。

国(こども家庭庁)のガイドラインでも、これらは「情報の重複がない部分を互いに補完し合う関係」であると明記されており、片方だけを確認してもスクリーニングとしては不完全となります。両方の照会を確実に網羅しなければなりません。

2. 【運用の罠】内定「前」と「後」で使い分ける二段階フロー

実務上、人事労務担当者が最も混乱しやすいのが「照会をかけるタイミング」です。日本版DBSは、気になった求職者に対していつでも自由に前科を照会できるシステムではありません。

国が示す正規の採用手続フローでは、明確に「二段階の手続」として定義されています。

① 内定(内示)前:既存の「教員DB・保育士DB」で確認

求職者の履歴書をもとに、任命・雇用の判断材料として、まずは既存のデータベースから行政処分歴がないかを検索します。

② 内定(内示)後:DBSチェックで前科確認

犯罪事実確認(前科照会)は、個人のプライバシーに関わる極めて機微性の高い情報を取り扱います。そのため、「採用が決定(内定・内示)していない者」に対して行うことは出来ません。内定を出したのち、本人の明確な同意(アカウント作成等)を得て初めて、システムを通じて刑事罰の照会をかけることができます。

3. 【対象者の違い】資格を持たない「全従事者」に潜むリスク

教員DBや保育士DBの対象は、当然ながら「有資格者」に限られます。しかし、こども性暴力防止法が対象とするのは、職名や資格の有無ではありません。

現場において「支配性・閉鎖性・継続性」の「3要件」を満たす従事者は、全員が日本版DBSの確認対象となります。

職名にかかわらず対象となる具体例

ガイドラインでは、資格の有無を問わず、以下のスタッフも「支配性・閉鎖性・継続性」3要件を満たせば「犯罪事実確認」の対象になると明記されています。

  • 事務職員
  • スクールバス・送迎バスの運転手
  • 学校用務員
  • 給食の調理員
  • 部活動の外部指導者・コーチ
  • ボランティア、実習生

既存のデータベースだけに頼り、これらの無資格スタッフのスクリーニングを怠った状態で業務に就かせた場合、義務対象事業者は「名称公表」、任意による認定事業者は「認定取消し」という、組織の信頼を根本から揺るがす厳しい社会的制裁を受けることになります。

結論:自社の「実態」に合わせた個別設計が今すぐ必要です

「教員DB・保育士DBがあるから大丈夫」と安心し、日本版DBSへの対応を後回しにすることは、法適合の観点からも、組織のガバナンス(危機管理)の観点からも極めてハイリスクです。

これは「スタッフ全員に一律で照会をかければいい」という単純なものではありません。非常勤講師の入れ替わり、外部委託業者との契約形態、ボランティアの受け入れ体制など、それぞれの学校法人・保育所等、義務事業者の「運用の実態」に合わせたオーダーメイドの規程策定とフロー設計が求められます。

当事務所(POLAIRE)では、こども性暴力防止法に基づく体制整備・認定申請に特化し、貴組織の実務を麻痺させない現実的かつ強固なガバナンス構築をサポートしております。

「自社のこの職種は対象になるのか?」「既存の就業規則とどう整合性を取ればいいか?」など、少しでも不安をお持ちの理事長様、人事労務責任者様は、施行が迫る今、どうぞお早めにご相談ください。

※就業規則の改定、採用フローの見直し等、労働法に関する事項は人事労務に精通した弁護士の先生をご紹介いたします。

Q
既存の「教員免許失効者システム(教員DB)」を毎回の採用で確認していれば、法的な義務は果たしていることになりますか?
A

いいえ、それだけでは不十分です(法適合しません)。
既存の教員・保育士DBは「行政処分歴」を管理するものであり、日本版DBS(こども性暴力防止法)が求める「刑事罰(前科)」の照会とは法的な位置づけが異なります。また、既存のDBでは免許を持たない事務職やバス運転手などの履歴を追うことができません。両方のシステムを並行して運用する体制が必要です。

Q
採用ミスマッチを防ぐため、日本版DBSの「犯罪事実確認」を内定前の面接段階で行うことはできますか?
A

絶対にできません。法律で厳格に禁止されています。
犯罪事実確認(前科照会)で得られる情報は、極めて機微性の高いプライバシー情報です。そのため、本人同意があったとしても「内定(内示)を出す前の求職者」に対して照会をかけることは認められません。まずは既存のDB確認や面接等の通常選考を行い、「採用することを決定した(内定)」段階で初めて日本版DBSの照会プロセスへ進むという二段階の業務フローを遵守する必要があります。

Q
事務職員や外部委託スタッフなど、無資格の職員のチェックを怠った場合、どのような制裁がありますか?
A

義務対象事業者の場合は「名称公表」、認定事業者の場合は「認定取消し」の対象となります。
こども性暴力防止法では、資格の有無ではなく「こどもと密接に接する業務(支配性・継続性・閉鎖性の3要件)」に就くか否かで対象者を判断します。これを怠り、対象スタッフをスクリーニングせずに業務に就かせた場合、重大なガバナンス欠如とみなされ、国から勧告・命令を経て「事業者名の公表」や「認定の取消し」という厳しい社会的ペナルティが科されます。

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