【日本版DBSの核心】なぜ確認書に「氏名」を記載しないのか?—申請番号のみが担う究極の情報セキュリティ

日本版DBS制度の概要を象徴する抽象イメージ(法律書と議事堂のイラスト) FAQ

犯歴情報を取り扱う上での最大の課題

こども性暴力防止法(日本版DBS)の目的は児童の安全確保です。しかし、その手段として**特定性犯罪の経歴(犯歴)**という極めて機微性の高い個人情報を取り扱うことになります。

犯罪事実確認の結果を記した「犯罪事実確認書」は、万が一漏洩すれば、個人の権利利益の侵害や制度に対する信頼喪失につながるおそれが大きく、このリスクを最小限に抑えるため、確認書には本人が特定できる氏名等の情報は記載せず、代わりに申請番号(システム上の管理番号)のみを記載する運用が採用されています。

本記事では、この特異な様式の理由と、事業者が知っておくべき「申請番号」の管理および情報管理措置の基本原則を解説します。

犯罪事実確認書の法定記載事項と様式の原則

確認書の必須記載事項と情報限定の理由

法第35条第4項に基づき、犯罪事実確認書に記載される事項は限定されています。

  • 申請対象者情報(氏名、住所、生年月日、性別など—ただし確認書本体には記載されない)
  • 犯罪事実確認の確認日
  • 特定性犯罪事実該当性の有無(該当者でない場合はその旨)
  • 特定性犯罪事実該当者の区分(拘禁刑、執行猶予、罰金刑のいずれか)および裁判の確定日(犯歴ありの場合のみ)

特に申請対象者情報については、万が一確認書が漏洩した場合に備え、本人が特定できる情報は記載しないことが適当とされています。

申請番号(システム上の管理番号)の役割

確認書には、本人の氏名等に代わり、関連システム上の管理番号である申請番号のみが記載されます。
事業者は、申請番号と申請従事者の氏名を紐づけた管理簿等を別途管理することで、確認書の内容と申請従事者を照合します。

厳格な情報管理の徹底:システムと運用の原則

システム上での閲覧原則と情報転記の回避

犯罪事実確認書の交付は、原則として関連システム上での閲覧のみ可能です。
情報の転記による電子ファイルや紙の記録・保存・伝達・利用は極力避けることが、情報管理の基本原則とされています。
これは、デジタル化を推進し、機微性の高い情報がシステム内で厳格に管理されることを目的としています。

氏名を記載しないことによるセキュリティ効果

確認書本体に氏名や住所が記載されていないことで、もし確認書が流出した場合でも、文書単独では特定個人の犯歴情報を外部に開示するリスクが軽減されます。
事業者は、情報管理規程を策定し、犯罪事実確認記録等(確認書および申請番号に紐づく情報)を適正に管理する義務があります。

情報管理違反と罰則リスク

目的外利用・第三者提供の禁止

犯罪事実確認記録等は、犯罪事実確認または防止措置の実施目的以外での利用や第三者提供は原則禁止です(法第12条)。
例外的な問い合わせ対応でも、保護者に特定従事者の犯罪事実を回答することは第三者提供に該当し、禁止されます。

秘密保持義務と罰則

確認書受領者やその関係者は、特定性犯罪の経歴に関する情報をみだりに他人に知らせたり、不当な目的で利用してはなりません(法第39条)。
申請番号のみの記載であっても、番号と紐づいた情報の漏洩は重大事態としてこども家庭庁への報告義務の対象となります。

まとめ:安全性を確保するシステム運用の徹底

  • 犯罪事実確認書に氏名ではなく申請番号のみを記載する仕組みは、犯歴情報の秘匿性を確保し、児童の安全を守るための制度設計上の要です。
  • 事業者は、関連システムを通じて確認書を閲覧し、紙や電子ファイルでの転記を極力避け、厳格な情報管理を徹底する必要があります。
※執筆時点の情報です。最新の内容・詳細については直接お問い合わせください。

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