初期対応の最前線における言葉の重み
こども性暴力防止法(日本版DBS)の施行により、教育・福祉・保育等の事業者は、被害児童への対応において「犯罪事実確認」や「安全確保」だけでなく、児童の心理的安全を損なわない聴き取りが求められています。
とくに初期対応段階での言葉選びは、被害児童のその後の支援にも大きな影響を与えます。
「辛いのは分かる」「怖かったね」といった一見共感的な言葉であっても、聴き取りの目的や段階によっては“二次被害”を引き起こす危険性があります。
共感的言葉が逆効果になる背景
記憶の汚染と心理的負担の再活性化
性暴力被害の聴き取りでは、児童が体験した事実を正確に把握することが求められます。
しかし、感情的な言葉や誘導的な反応は、児童が“相手の期待に合わせた回答”をしてしまう原因となり、記憶の歪曲を招くことがあります。
さらに、「辛いのは分かる」と言われることで、児童が“自分は被害者として扱われている”という認識を強め、羞恥心や罪悪感を再び感じる場合もあります。
このような心理的反応は、支援の場面で**二次的トラウマ(再体験)**を引き起こすことにもつながりかねません。
聴き取り時に意識すべき基本原則
「評価」ではなく「受け止め」と「記録」
被害児童への聴き取りで最も重要なのは、児童の発言をそのまま受け止め、正確に記録する姿勢です。
事業者や支援者は、児童の感情を評価したり、励ましたりする立場ではなく、あくまで「事実確認と安全確保のための聞き取り者」として行動します。
そのため、
- 感情を推測する言葉(例:「怖かったね」「辛かったね」)
- 評価や判断を含む言葉(例:「よく話してくれたね」「勇気があるね」)
- 無理な沈黙の打破(例:「続けて話してもらえる?」)
は避けるべきです。
代わりに、児童の発言を尊重する中立的な言葉を用います。
たとえば「そう聞こえたんだね」「そういうことがあったんだね」というように、事実の受け止めに徹することで、心理的安全を保ちながら聴き取りを進めることができます。
二次被害を防ぐための組織的な工夫
個人対応からチーム対応への移行
児童への聴き取りは、一人の職員が抱え込むべきものではありません。
事業者は、法に基づく「相談・通報体制」や「専門家連携」を活用し、複数の視点で支援に当たる体制を整備する必要があります。
心理職や医療職、児童相談所などとの連携を前提に、
- 聴き取り内容を共有する範囲と方法を明確にする
- 記録管理・保存に関する責任者を定める
- 情報の取り扱いを職員研修に組み込む
といった体制的措置を講じることが求められます。
まとめ:言葉の選び方が支援の質を左右する
被害児童への聴き取りは、「聞く技術」よりも「言葉の選び方」こそが支援の出発点です。
共感や励ましの言葉が、かえって児童に負担を与えることを理解し、常に中立的な姿勢を維持することが求められます。
こども性暴力防止法(日本版DBS)の目的は、児童の安全と尊厳を守ることにあります。
その実現のために、事業者・支援者一人ひとりが「言葉の重み」を再認識し、制度の趣旨に即した実践を行うことが重要です。
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