なぜ「犯罪事実確認書」を記録・保存してはいけないのか?— 日本版DBS制度における“極力回避原則”とその例外運用

日本版DBS制度の概要を象徴する抽象イメージ(法律書と議事堂のイラスト) 制度概要

はじめに:情報管理規程の7つの基本原則と機微情報の特性

日本版DBS(こども性暴力防止法)において、認定事業者等には「犯罪事実確認記録等(犯罪事実確認書およびその情報に係る記録)」を適正に管理するための情報管理規程の策定が義務づけられています。
この規程は、内閣府令で定められた「7つの基本原則」を踏まえて設計する必要があり、その中でも特に重要なのが**「犯罪事実確認書の内容の記録・保存を極力避けること」**という原則です。

この原則は、機微性の高い個人情報の保護と、漏えいリスクの最小化を目的としており、情報管理措置の中核を成します。


記録・保存を避けるべき理由:法的意図と運用の実際

犯罪事実確認書の漏えいリスクと「極力回避原則」の意図

犯罪事実確認書には、従事者の過去の犯罪歴等、極めて機微性の高い情報が含まれています。
これらが漏えいした場合、本人の社会的信用や職業上の地位に甚大な損害を及ぼすおそれがあるため、「不必要な記録・保存は行わない」というのが基本方針です。
不要な記録は速やかに廃棄・消去し、事業者が保有する情報を必要最小限に限定
することが求められます。

閲覧方式による「非保存」運用

制度上、犯罪事実確認書の交付は「こども性暴力防止法関連システム」上の画面閲覧によって行われます。
このシステムにログインすれば、法定の保管期間内(通常5年)であれば、必要に応じていつでも閲覧が可能です。
そのため、紙や電子データに転記・保存する必要はなく、むしろ避けることが制度設計上の原則とされています。

アクセス権限の最小化と内部統制

事業者内部での情報共有も、あらかじめ設定された閲覧権限を持つ職員に限定されます。
この制御により、不要なコピー・転送・共有が防止され、情報漏えいリスクを最小限に抑えることが可能です。


「やむを得ず記録・保存する場合」の例外的運用とリスク管理

例外の明確な定義と管理規程タイプ

ガイドラインでは、「やむを得ず記録・保存を行う場合」に備え、リスクに応じた管理措置を講じることが定められています。
例外的な運用は、以下のような状況に限定されます。

  • 複数の責任者が犯罪事実確認結果を同時に確認する必要がある場合
  • システム障害や通信不良等により、一時的に外部媒体への保存が避けられない場合
  • 行政監査等において、確認証跡を一定期間保持する必要がある場合

この場合、ガイドライン上の「情報管理規程ひな型③」に該当し、厳格な例外管理措置を伴います。


例外運用時に求められる「物理的・技術的管理措置」

1. 物理的情報管理措置(紙媒体・機器の管理)

  • 取扱区域の限定
    犯罪事実確認記録等を扱う場所を明確に区分し、権限のない者の立ち入りを制限します。
  • 盗難防止策
    書類は施錠可能なキャビネットに保管し、PC等の機器はセキュリティワイヤー等で固定します。
    不在時には施錠保管を徹底することが求められます。
  • 廃棄の完全消去
    紙媒体の破棄は、焼却・溶解・クロスカット方式など復元不可能な方法を採用します。

2. 技術的情報管理措置(電子データ・アクセス管理)

  • 端末の要件
    私用端末の利用は禁止。業務専用端末で、OSやアプリの最新版を維持することが必須です。
  • アクセス制御と多要素認証
    システムアクセスには、ユーザーID・パスワードに加え、ICカードや生体認証等を組み合わせます。
  • 離職・異動時の迅速な権限解除
    職員の退職・異動に伴い、即時にアクセス権を削除し、再利用を防止します。
  • 持ち運びと伝達の厳格管理
    外部媒体で持ち運ぶ場合は、暗号化・パスワード保護・封入管理を行い、移動経路や日時を記録。
    公共交通を利用する際は、手元から離さず安全に運搬します。

まとめ:記録を「残さないこと」こそが最大の情報保護

日本版DBS制度における「犯罪事実確認記録等」の管理では、**“保有しない勇気”**が最も重要です。
閲覧型システムにより必要時にアクセスできる以上、紙やデータを残す行為は、むしろリスクを増大させます。
例外的に記録・保存を行う場合であっても、その都度、物理的・技術的な厳格管理を徹底しなければなりません。

法令・指針に適合する情報管理規程の策定に関しては、ぜひ専門家にご相談ください。

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