はじめに:調査の法的義務と「公正・中立」原則
こども性暴力防止法(日本版DBS)において、児童対象性暴力等が行われた疑いがある場合、認定事業者等には「事実の有無および内容の確認」を行う法的義務があります。
この調査は、内閣府令で定める基準に適合した「児童対象性暴力等対処規程」に基づき、公正かつ中立に実施することが求められています。
特に被害児童への聴き取りの場面では、人権の尊重と二次被害の防止が最優先事項です。
一度の対応が、児童の将来や回復過程に大きく影響することを理解したうえで、慎重な調査手法を採る必要があります。
人権と特性に配慮した調査の原則
内閣府令では、調査の方法に関して次の3つの基本原則が定められています。
- 児童等の人権・特性に配慮し、名誉および尊厳を害しないこと
発達段階や障害の有無に応じ、児童の理解力・感情表現に合わせた方法で聴き取りを行うことが重要です。 - 加害が疑われる職員の人権にも配慮し、公正中立に行うこと
被疑者を一方的に断定することなく、証拠に基づく慎重な判断が求められます。 - 関係機関と適切に連携して行うこと
児童相談所や警察、医療機関等との連携により、調査の正確性と公平性を確保します。
これらの原則は、調査を単なる内部確認にとどめず、社会的信頼を維持するための制度的義務として位置付けられています。
被害児童への聴き取りにおける留意点と「記憶の汚染」防止
被害を受けたと思われる児童への聴き取りでは、特に以下の点に注意する必要があります。
- 記憶の汚染の防止
児童に何度も話を聴いたり、誘導的な質問を行ったりすることで、事実関係が歪められるおそれがあります。
記憶能力が発達段階にある児童ほど、周囲の発言や推測を自分の体験と混同するリスクが高まります。
したがって、一度の聴取で必要な情報を過不足なく得る技術が求められます。 - 二次被害の防止
話を聴く過程で、心理的負担を与えたり、再度被害を想起させることがないよう、環境設定や言葉選びに細心の注意を払う必要があります。 - 負担の軽減
長時間の聴取を避け、児童の体調や感情の変化に合わせて休憩を入れるなど、心身への配慮を怠らないことが重要です。
専門家との連携義務と「代表者聴取」の実施
調査の実効性を確保するため、専門的知識を有する者の協力を得ることが法的に求められます。
具体的に連携が推奨される専門家は以下のとおりです。
- 臨床心理士・公認心理師
児童の心理的特性やトラウマ反応に理解があり、聴き取りの方法を科学的に支援します。 - 弁護士
調査の適法性や記録の取扱いに関する助言を行い、手続的公正を担保します。
また、被害児童の聴き取りにあたっては、**「代表者聴取(協同面接)」**と呼ばれる、複数の専門家による協働形式が推奨されています。
これは、児童への心理的負担を最小化しながら、事実関係を正確に把握するための制度的工夫です。
犯罪の可能性がある場合の外部機関連携
調査の結果、犯罪行為の可能性が高い場合や「被措置児童等虐待」に該当する事案では、速やかに関係機関との連携が求められます。
警察・児童相談所・地方自治体等との情報共有を通じて、早期の保護と法的措置を図ることが原則です。
横断指針でも、「犯罪が疑われる場合は警察と早期に連携すること」が明記されています。
事実確認プロセスの明確化と証拠収集
事実確認においては、被害児童および加害が疑われる従事者双方からの聴取が基本です。
ただし、未就学児や意思表出が難しい児童の場合には、保護者や関係職員への聴き取りを通じて補完します。
また、両者の主張が食い違う場合には、以下のような客観的証拠の収集が求められます。
- 第三者(保護者、目撃者、他職員など)への確認
- 監視カメラ映像や記録ログ
- SNSやメールの履歴等、電子的証拠の保存
これらの証拠を総合的に評価することにより、恣意的な判断を防ぎ、信頼性の高い調査を実現します。
まとめ:専門性と慎重さが制度の信頼を支える
児童対象性暴力等の調査は、方法を誤ると被害児童の心に深い傷を残すだけでなく、組織の信用も失われかねません。
専門家と連携し、調査体制と規程整備を行うことが、真の再発防止と人権尊重につながります。
法令遵守を前提にした実効的な運用体制構築をご検討の際は、ぜひご相談ください。
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