急務と安全のバランス
こども性暴力防止法において、犯罪事実の確認は**原則として「業務に従事する前」に行うことが求められています。
しかし、現場では突発的な欠員や事業所間の人事異動などにより、事前確認が間に合わない場合があり得ます。そのような場合に認められているのが「いとま特例」**です。
この特例が適用される場合、従事開始後に犯罪事実確認を行うことが認められますが、確認期限は原則として従事開始日から3か月以内と明確に定められています。
さらに、本記事では以下を中心に解説します。
- 3か月期限を確実に遵守するための準備と実務運用
- 例外的に期限が「最長6か月」まで延長される条件
- 特例適用期間中に義務付けられる安全措置(「特定性犯罪事実該当者」とみなす運用)
1. 原則の期限(3か月)と、例外的に延長される期限(6か月)
1-1. 3か月期限が適用されるケース
いとま特例は、「急な欠員」など、事業者側の責めに帰すことができない事情がある場合に限り適用されます。
そして、多くの通常ケースでは、従事開始日から3か月以内に犯罪事実確認を完了しなければなりません。
3か月期限を守るための実務上のポイント
- 特例適用の決定と同時に、犯罪事実確認手続を開始する
- 本人による必要書類(戸籍等)準備を遅らせない
- 事務担当者を明確にし、進捗を管理する
確認申請の開始が遅れると、期限遵守はほぼ不可能になるため、**「特例適用が決まった瞬間に動く」**体制が重要です。
1-2. 6か月期限が適用される二つの主要な例外
いとま特例の期限は政令で最長6か月までとされていますが、延長が認められるのは以下のような限定的な事情がある場合に限られます。
| 延長理由 | 内容 |
|---|---|
| 組織変更等が伴う場合 | 新設合併・吸収合併・事業譲渡等により多数の確認対象者が同時に生じ、事務処理が集中するケース |
| 国側の交付遅延がある場合 | 事業者が3か月以内に十分余裕をもって申請したにもかかわらず、国から交付がなされない場合 |
特に後者は、事業者側の遅れではないことが重要な基準となります。
2. 「やむを得ない事情」の厳格な解釈と文書保存の必要性
いとま特例が認められるのは、「急な欠員その他やむを得ない事情」がある場合に限られます。
事業者側が備えるべき点
- 事情を説明する文書や記録を保存することが義務
- 「なぜ事前確認ができなかったのか」を客観的に示せる状態にしておく
- 監督時(法第29条)に提示が求められる可能性を前提とした記録管理を行う
例:
- 内示決定が業務開始直前となった記録
- 派遣契約締結の遅れに関するやり取り
- 急な退職者発生の記録
「形式だけの記録」ではなく、説明可能性を備えた記録が必要です。
3. 特例適用期間中に求められる安全確保措置
いとま特例の対象となる従事者について、犯罪事実確認が完了するまでの間は、「特定性犯罪事実該当者とみなす」扱いとなります。
そのため、事業者は安全確保措置(必要な措置)を講じる義務を負います。
3-1. 基本原則:児童等と一対一にさせない
- 一人で児童対応を任せない
- 個別指導・面談など一対一の状況が発生しないシフト編成と配置を行う
- 初動期間は研修業務・補助業務を優先させる
「現場の慣れ」や「人手不足」を理由に緩和することはできません。
3-2. やむを得ず一対一となる場合の厳格な手順
以下の体制が必要です。
- 事前通知
- 対象児童、日時、場所、一対一が必要な理由を管理者に共有
- 事後報告
- 面談・指導終了時に速やかに完了報告
- 環境整備(視認性の確保)
- 外部から内部が確認できる部屋
- 防犯カメラ設置スペース
- 可能な場合はオンライン面談方式の検討
突発的な事故・危険回避など、児童の安全確保が最優先される状況では例外が認められますが、この場合も「事後記録+再発防止策検討」は必須です。
まとめ:期限遵守と安全確保体制の構築
- いとま特例は、事業運営の継続を支える重要な制度ですが、児童の安全が最優先です。
- 確認期限は原則3か月、特定の事情がある場合に限り最長6か月まで延長されます。
- 特例期間中は、従事者を**「特定性犯罪事実該当者とみなす」**扱いとし、一対一回避を基本とした安全措置を徹底することが求められます。
- 対象者には採用段階・配属段階で書面により措置内容を通知する体制整備が必要です。
※執筆時点の情報です。最新の内容・詳細については直接お問い合わせください。
行政書士事務所 POLAIRE(ポレール)
お問い合わせ先
TEL:096-288-2679
FAX:096-288-2798
MAIL:polaire@sp-pallet.net
※3営業日以内にご連絡差し上げます。
営業時間(完全予約制)
火・水・金・土:10:00~19:00
月・木:10:00~12:00
※日曜・祝日は休業日です。
※お電話でのご相談は行っておりません。
※ご依頼内容により必要な手続きが異なるため、「金額だけ」をお伝えすることはできません。必ず対面またはオンラインでお話を伺ったうえで、お見積りをご提示いたします。
夜間オンライン相談(完全予約制)
毎週水・金曜日:20:00~21:00(オンライン対応のみ)
※日中にお時間が取れない方のための予約制相談です。
ご予約完了後、オンラインミーティングのURLをお送りします。
