雇用関係がないからこそ発生する複雑な課題
こども性暴力防止法(日本版DBS)の対象業務従事者には、事業者と直接雇用関係にない派遣労働者や請負労働者(以下「派遣労働者等」)も含まれます。
派遣労働者等に対する安全確保措置(犯罪事実確認、研修受講等)の義務は、派遣先や発注者である対象事業者(以下「派遣先等」)が負います。
しかし、派遣先等には指揮命令権限が限定されており、かつ犯歴情報という機微情報を扱うため、法令遵守と児童の安全確保を両立させるには、契約と情報共有ルールの徹底が不可欠です。
児童の安全確保のための契約上の義務付け
なぜ契約に明記する必要があるのか
派遣先等は、派遣労働者に対して犯罪事実確認のための戸籍等の提出依頼や研修受講の依頼を行うことが想定されます。
これらの依頼は、労働者派遣法で禁止されている特定目的行為(偽装請負等)と誤解されないよう、派遣元等の指示に基づいた対応や契約上の役割分担が必要です。
契約に明記することで、派遣元等を通じて派遣労働者等に法定措置の対象であることや必要事項を確実に伝達することができます。
契約規定の具体的な内容
- 労働者派遣契約や請負契約に「犯罪事実確認(戸籍等の提出を含む)及び研修受講を行った者を業務に従事させなければならない」と明記する。
- これらの措置に応じない者が発生した場合、派遣先等から派遣元等に対し、派遣労働者の変更や業務処理の見直しを要請できる旨を契約に盛り込む。
特定性犯罪事実該当時の対応:犯歴情報伝達禁止の原則
法第12条「目的外利用・第三者提供の禁止」の適用
犯罪事実確認の結果得られた情報(犯罪事実確認記録等)は、犯罪事実確認または防止措置の実施目的以外のために第三者に提供することは原則禁止(法第12条)。
派遣先等が犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であることを把握しても、犯歴情報そのものを派遣元等に伝えることは法違反に該当します。
交代要請を行う際の法的に適正な伝達方法
- 犯歴情報そのものを伝えず、派遣先等は派遣元等に対して「おそれがあると認めた」という事実のみを伝え、交代等を求める。
- 労働者派遣契約や請負契約に「児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めたときに交代を求めることができる」との規定を予め盛り込むことで、法令遵守と安全確保を両立させる。
交代要請を受けた派遣元等が負う責任
- 派遣契約終了を理由とした解雇の禁止:派遣元は契約終了のみを理由に派遣労働者を解雇できない。
- 適切な対応の検討:事情の聞き取りを行い、児童と接しない業務への変更、別の派遣先への派遣、休業等の措置を検討。
- 懲戒処分の検討:派遣先で児童対象性暴力等や不適切行為が明らかになった場合、派遣元の就業規則に基づく懲戒処分の検討が必要。
まとめ:契約と情報秘匿の二重管理の徹底
- 派遣労働者等を業務に従事させる事業者は、児童の安全確保と犯歴情報の厳格な管理(第三者提供禁止)の両方の義務を負う。
- 実務上の最重要ポイントは、派遣元等との契約に安全確保措置の実施義務を明記すること、及び交代要請時に犯歴情報そのものを伝えないこと。
- この二重管理の徹底により、法第12条違反を回避しつつ、児童の安全を確保することが可能となる。
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