日本版DBS制度における「相談の実施」の位置づけ
こども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS)では、児童等が性暴力等の被害や不安を抱えた際に、自ら相談できる環境を整備することが、学校設置者や認定事業者等に求められています。
- 学校設置者等は法第5条第2項
- 認定事業者等は法第20条第1項第3号
に基づき、**児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするための措置(相談の実施)**を講じなければなりません。
ここでいう「相談の実施」の具体的な内容は、大きく次の二つに整理できます。
- 事業者内における
相談員の選任または相談窓口の設置・周知 - 児童対象性暴力等に係る
外部相談窓口の周知
本記事では、これらの法的要請を踏まえつつ、児童等の年齢や特性に寄り添った相談窓口の設計・運用上のポイントを整理します。
児童等の年齢や特性に応じた「複数の相談先」の設計
なぜ「複数の相談先」が求められるのか
ガイドラインでは、児童等が相談しやすくなるよう、複数の相談先を用意し、選択肢を確保することが求められています。
この背景には、次のような実務上の前提があります。
- 児童等は、年齢・発達段階・障害の有無などによって、
「話しやすい相手」「安心して相談できる人」のイメージが大きく異なる - 一人の相談担当者だけでは、
すべての児童等のニーズに十分応えられない場合がある
そのため、相談窓口の設計にあたっては、児童等の年齢や特性を踏まえた複数配置が基本となります。
性別への配慮:相談員の配置と選択肢
実務上、性暴力被害の相談では、相談者が相談相手の性別を選べることが心理的安全性を高める重要な要素となります。
- 可能な限り、男女両方の相談員を配置する
- 児童等が「同性の相談員を選べる」「異性の相談員を選べる」といった
選択の余地があることを事前に周知しておく
このように、相談窓口の案内の段階で「誰に相談できるのか」を具体的に示すことが、相談への一歩を踏み出しやすくする工夫になります。
外部相談窓口の併用による心理的ハードルの低減
ガイドラインでは、次の点も重視されています。
- 面識がない相談相手の方が、かえって話しやすい児童等もいる
- 組織内部の人間に話すこと自体が負担になる場合もある
このため、外部の相談窓口を複数周知することが求められます。
内部窓口だけで完結させるのではなく、
- 自治体や専門機関が運営する相談窓口
- 電話・オンライン等で相談可能な外部窓口
など、複数の外部窓口を一覧化し、児童等にわかりやすく伝えることが重要です。
相談体制の柔軟な運用:一対一か、複数名か
相談を受ける場面では、次のような体制上の選択も発生します。
- 相談員複数名で対応するか
- カウンセラー等の専門職を同席させるか
- あえて一対一で落ち着いて話を聞くか
ガイドラインでは、こうした体制について、可能な限り児童等の意向を踏まえて判断することが求められています。
事前に「どういった体制で相談を受けられるか」を整理しておくことが、実務運用上のポイントとなります。
匿名相談の可否を含む、多様な相談方法の提供と明示
相談しやすさを高める「手段」のバリエーション
児童等が相談に踏み出すうえで、相談方法そのものが心理的ハードルになっていることは少なくありません。
そのため、事業者等には、児童等が相談しやすくなる方法を 具体的に明示すること が求められます。
例として、以下のような手段が考えられます。
- 面談による相談
- 電話による相談
- 手紙やメールによる相談
- SNS等を活用した相談 など
重要なのは、「どの方法で相談できるのか」を児童等にも分かりやすい形で提示することです。
匿名相談の可否を明確に伝える
相談の心理的ハードルを下げるうえで、匿名での相談の可否は非常に重要です。
- 「匿名で相談できる」場合には、その旨を明示する
- 匿名相談でも対応可能な範囲・限界がある場合には、
できる限り分かりやすく説明しておく
ガイドライン上も、「匿名で相談できる」ことを、周知の際に明示することが求められる事項とされています。
匿名相談の可否を曖昧にしたままにせず、制度設計段階で方針を明確にしたうえで告知することが不可欠です。
性暴力以外の相談も受け付けることの周知
相談窓口を「性暴力被害専用」と狭く位置づけてしまうと、児童等が相談しづらくなるおそれがあります。
ガイドラインでは、「性暴力以外のことも相談できる」ことを明示することの重要性が指摘されています。
例えば、
- 「心身の不調」
- 「人間関係の悩み」
- 「学校や施設での不安・困りごと」
等を含めて、「困ったときはまず相談してよい場所」であると周知することが、結果として性暴力被害の早期把握にもつながると考えられます。
相談対応における基本姿勢と相談者保護の徹底
相談を受ける者の心構え:聞くことを主眼に
相談を受ける者には、次のような基本姿勢が求められます。
- 相談内容をしっかりと受け止め、話を聞くことを主眼とする
- 児童等の気持ちに共感して寄り添う
- 相談者を責めない・否定しない
- 相談者が言いたくないことを無理に聞き出そうとしない
こうした姿勢は、単に望ましい心構えというだけでなく、二次被害を防ぐうえで不可欠な要素です。
相談体制を構築する際には、相談担当者に対して、これらのポイントをあらかじめ共有し、研修やマニュアルを通じて徹底することが求められます。
情報の厳格な取扱いと安心の伝達
相談後の情報管理についても、児童等に対して明確に説明する必要があります。
- 相談者・相談内容等の情報は、厳格に取り扱われること
- 不必要に多くの関係者に共有されないこと
- 共有が必要な場合でも、目的・範囲を限定すること
これらをあらかじめ説明し、秘密が守られることへの信頼感を児童等に持ってもらうことが、相談行動を支える基盤になります。
相談を理由とする不利益取扱いの禁止
相談したことによって、
- 成績や評価に影響する
- 施設内での立場が悪くなる
- 仲間から孤立させられる
といった不利益を受けるおそれがあると感じれば、児童等は相談をためらってしまいます。
そのため、
- 相談を行った児童等が不利益な取扱いを受けないことを、
児童等に対して明確に伝えること - 組織としても、不利益取扱いを防止するルールを整備・運用すること
が不可欠です。
「相談しても大丈夫」「自分は守られる」という感覚を持てるかどうかが、相談行動の有無を大きく左右します。
保護者への配慮と外部相談窓口との連携
保護者に対する相談窓口設計のポイント
日本版DBS制度における相談体制は、児童等本人だけでなく、保護者からの相談も視野に入れる必要があります。
保護者に対しても、児童等と同様に、
- 複数の相談先から選択できるようにすること
- 匿名相談や外部窓口の利用が可能である場合、その旨を明確に伝えること
- 相談内容の秘密保持が徹底されること
など、心理的ハードルを下げるための工夫が求められます。
外部相談窓口の一覧化と分かりやすい周知
外部相談窓口の周知については、単に名称だけを列挙するのではなく、次のような工夫が有効です。
- 外部相談窓口の一覧表を作成する
- 窓口ごとに
- 相談できる主な内容
- 対応時間帯
- 相談方法(電話・メール・SNS等)
を簡潔に記載する
こうした情報を、児童等や保護者が一目で理解できる形で提示することにより、「いざというときにどこに相談すればよいか」が明確になります。
相談体制全体の連携と継続的な見直し
内部窓口と外部窓口は、相互に独立した仕組みではなく、児童等を守るための一体的な相談ネットワークとして機能することが望まれます。
- 内部窓口で受けた相談を、必要に応じて外部機関につなぐ流れ
- 相談対応の事後検証やケースレビューを通じた改善
- 相談体制全体の定期的な振り返り・見直し
といった運用を通じて、実効性のある相談体制を維持していくことが重要です。
まとめ:児童等の心理的安全性を支える相談窓口運用へ
日本版DBS制度に基づく「相談の実施」は、単に相談窓口を設置し、連絡先を掲示すれば足りるものではありません。
- 児童等の年齢・特性に応じた複数の相談先の用意
- 匿名相談を含む多様な相談方法と、そのわかりやすい明示
- 相談を受ける者の姿勢・心構えの徹底
- 情報管理と不利益取扱い禁止による相談者保護
- 保護者を含めた相談体制の連携と外部窓口の周知
これらの工夫は、児童等の心理的安全性を高め、被害の早期開示を促すために不可欠です。
貴事業所の事業形態や、利用する児童等・保護者の特性に合わせて、具体的かつ実効性のある相談窓口運用マニュアルを整備しておくことが、制度対応だけでなく、組織の信頼性向上にも直結します。
自施設の実情に即した相談窓口の設計や、運用マニュアルの具体化について、より詳細な整理や文案作成が必要な場合には、専門家への相談も検討されるとよいでしょう。
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