従事者の協力義務と事業者の法的責任
こども性暴力防止法(日本版DBS)に基づき、対象業務従事者は犯罪事実確認のため、氏名や本籍を証明する戸籍等の書類を内閣総理大臣(こども家庭庁)に提出する義務があります。
戸籍等の提出は原則として従事者本人が直接行うことが定められており、期限までに提出がなされない場合、事業者が当該従事者を業務に従事させ続けると法令違反となります。特に、学校設置者等では公表の対象となり、認定事業者等では認定取消しのリスクがあります。
本記事では、提出拒否や期限未遵守が発生した場合に事業者が取るべき対応と、労働法上の留意点について解説します。
法令遵守のための基本対応:業務従事の停止
違法状態の回避措置
- 戸籍等の提出がなく犯罪事実確認が完了できない場合、期限を超えて従事させない対応が必要です。
- まずは人事権の行使として、対象業務からの一時的な配置転換を検討します。
- 従事者に速やかに提出手続きを促すとともに、違法状態を回避する措置を講じます。
事前の伝達義務の重要性
- 法施行前や新規採用時に以下の事項をあらかじめ書面等で伝えることが重要です:
- 犯罪事実確認の対象であり、一定期限までに戸籍等を提出する必要があること。
- 提出がなされない場合、対象業務に従事させることができないこと。
- 提出の趣旨・本人提出が原則であること・情報管理が徹底されること。
業務命令違反としての懲戒処分の検討
懲戒処分を検討する法的根拠
- 戸籍提出を含む犯罪事実確認手続への対応を求めたにもかかわらず、従事者が拒否した場合は業務命令違反として懲戒処分の対象となり得ます。
- 法定手続きへの拒否は犯罪事実確認義務違反を招くため、懲戒処分も検討対象となります。
懲戒処分における重大な考慮要素
- 犯罪事実確認は児童対象性暴力防止の重要手段であること。
- 事業者は確認結果に基づき防止措置を講じる責任があること。
- 就業規則で「企業秩序違反」「会社の規則・命令違反」が定められている場合、度重なる指導にもかかわらず協力しないことは該当すると判断されます。
実務上の対応手順と留意点
- 業務命令の徹底:まずは従事者に戸籍等の提出を速やかに行うよう口頭・書面で指示。
- 就業規則の整備:
- 犯罪事実確認手続への対応義務を規定。
- 正当な理由なく業務命令に従わない場合を懲戒事由に定める。
- 記録の保存:指導や命令の履歴を記録に残すことで、後日の対応や紛争時に証拠となります。
労働法制上のその他の留意点
- 配置転換の検討:懲戒処分に先立ち、人事権としての配置転換で違反状態を回避可能です。
- 公務員の場合の特則:
- 国家公務員法や地方公務員法が適用されるが、手順上の違いは大きくありません。
- 業務命令により一時的に接触回避措置を講じることが可能です。
- 紛争発生時の窓口:
- 労使間トラブル時は都道府県労働局等の総合労働相談コーナーを活用できます。
まとめ
- 戸籍提出拒否や期限未遵守は、事業者に法的リスクを生じさせます。
- 速やかな業務従事停止や配置転換、業務命令の徹底、就業規則の整備が基本対応です。
- 懲戒処分を行う場合は、犯罪事実確認の重要性や企業秩序違反の程度を踏まえ、合理性・相当性を十分に検討する必要があります。
- 公務員対応や紛争時窓口の活用も含め、従事者の協力義務と事業者の責任を明確化することが不可欠です。
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