※この記事はこども家庭庁が公表しているこども性暴力防止法施行ガイドラインを元に作成しています。
あわせてこども性暴力防止法の概要も合わせてご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案については、必ず専門家へご相談のうえご判断ください。
1. はじめに:日本版DBSにおける「民間事業者」の立ち位置
2026年12月に施行される「こども性暴力防止法(日本版DBS)」では、こどもに接する事業者を大きく2つに分けています。
- 学校設置者等(義務): 学校や認可保育所など、法律で安全確保措置が義務付けられている事業者。
- 民間教育保育等事業者(任意): 学習塾やスポーツクラブなど、任意で「認定」を受ける事業者。
民間教育保育等事業者は、国の基準を満たし「認定」を受けることで、義務対象の事業者と同様に「犯罪事実確認(DBSチェック)」が可能となります。これにより安全基準が可視化され、保護者に対する信頼の証とすることができます。
2. 認定対象となる事業の全体像
認定対象となる事業は、ガイドラインにおいて主に以下の3類型に分類されます。
- 法令上の届出等がある事業 認可外保育施設、放課後児童健全育成事業(学童保育)、一時預かり事業など。
- 学校教育に類する事業 専修学校(一般課程)や各種学校において、児童等を対象とする教育事業。
- 法令上の明確な定義がない事業(民間教育事業) 学習塾、スポーツクラブ、ダンススクール、英会話教室など。
3. 【実務の急所】「民間教育事業」として認められるための「5つの要件」
学習塾などが認定申請を行うためには、以下の5つの要件が求められます。
- 児童等に対する「技芸・知識の教授」を目的とすること 大人のみが対象の事業は不可。こども食堂の学習支援や芸能事務所の指導などは実態があれば対象となり得ます。
- 標準的な修業期間が「6ヶ月以上」であること 継続性の観点から。1回限りのイベントや短期プログラムは対象外です。
- 「対面」による指導であること 閉鎖性の観点から、完全オンライン指導のみの事業は対象外です。
- 「事業者が用意する場所」で指導すること 保護者指定の場所や、児童の自宅のみで行う家庭教師などは対象外です。
- 教授を行う従事者が「3人以上」であること 派遣労働者やボランティアを含め、組織的な管理体制が求められます。
4. 間違えやすい「対象外」の事業と境界線
児童福祉法等に基づく事業でも、「単なる拠点(場所)の提供」や「当事者同士の交流・マッチング」が主目的のものは対象外です(例:ファミリー・サポート・センター事業)。
一方、ベビーシッターや家庭教師等のマッチングサイト(派遣事業)であっても、単なる場所や機会の提供にとどまらず、運営者が自ら教育・保育の提供主体(個人シッターや個人の家庭教師と委託契約を結ぶ等)となっている場合は、認定の対象となり得ます。
5. (重要)実務の難所:自治体が関わる場合の「共同認定」スキーム
放課後児童クラブ(学童保育)や放課後子供教室のように、自治体が設置し、実際の運営を民間事業者(受託業者)が担っているケースがあります。このような場合、自治体が「民間教育保育等事業者」、現場を管理する受託業者が「事業運営者」という立場で、両者の協力で「共同認定」が可能となり得ますが、実務上は最もハードルが高いスキームの一つです。
共同認定に伴う「連携事務」の負担
単独での申請とは異なり、以下のプロセスにおいて非常に高い調整コストが発生します。
- 役割分担の明文化と添付義務: 「犯罪事実確認」「防止措置」「情報管理措置」といった各義務を、自治体と事業者のどちらが主導して行うのか、その役割分担をあらかじめ詳細に定め、申請書類の一部として添付する必要があります。
- 規程・報告書の二重チェック体制: 「情報管理規程」などの法定文書の作成や変更、さらには年 1 回の「定期報告」を行う際にも、一方が作成したものを他方が確認・承認した上で提出するという「連携事務」が必須となります。
- 責任の所在の不明確さ: 万が一、情報漏洩や安全確保措置の不備が発生した際、どちらの責任(罰則の対象)になるのかを契約レベルで詰めておかなければ、取り返しのつかないリスクを負うことになります。
「公的事業だから安心」ではなく、むしろ運営形態によっては認定スキームが極めて複雑化することを念頭に置き、自治体・事業者双方が早期に歩調を合わせることが不可欠です。
6. まとめ
日本版DBSの認定取得は、こどもたちの安全を守るだけでなく、保護者からの信頼獲得にも直結します。まずは、自社の事業が「民間教育保育等事業」のどの類型に当てはまるのか、特に学習塾などの場合は「5つの要件」を確実に満たしているかを、制度開始前に正確に見極めることが重要です。それが、認定申請に向けた社内規程の整備やシステム準備の第一歩となります。
- Q個人経営のピアノ教室ですが認定を受けられますか?
- A
原則として「従事者が3人以上」という要件があるため、講師1名のみの個人経営の場合は対象外となります。
- Qオンライン塾は認定の対象になりますか?
- A
「対面による指導」が要件となっているため、完全にオンラインのみで完結する事業は対象外です。ただし、対面指導を前提とした上でオンラインを併用している場合は対象になり得ます。
- Q数日間のキャンプイベントのみを運営していますが、認定は必要ですか?
- A
修業期間が「6ヶ月以上」という継続性の要件があるため、単発や短期のプログラムのみでは認定の対象となりません。

