児童対象性暴力の重大性とは|生涯にわたる影響と事業者に求められる責務を整理


※この記事は、こども家庭庁「教育・保育等を提供する事業者による児童対象性暴力等の防止等の取組 を横断的に促進するための指針」を元に執筆しています。

1.はじめに:性暴力は「最悪の権利侵害」である

児童対象性暴力は、被害を受けた児童の権利を著しく侵害し、心身に深刻かつ長期的な影響を及ぼす、極めて重大な加害行為です。
これは一時的なトラブルや個人的な問題ではなく、人としての尊厳を根底から揺るがす権利侵害であるという認識が不可欠です。

ここでいう「性暴力」は、刑法上の犯罪行為に限られるものではありません。
本人の意に反した性的な言動すべてが含まれ、身体的な接触を伴わない行為(非接触型)も対象となります。

⚠️ 「合意があった」は通用しません 16歳未満の児童に対しては、たとえ形式的な「同意」があったとしても、法的には性暴力(不同意性交等)とみなされます。 また、直接体に触れない**「盗撮」「性的な画像の要求」**も、日本版DBSが防止対象とする性暴力に含まれます。


2.被害が及ぼす心身への深刻な影響

性暴力は、他の暴力と比べても、**トラウマ(心的外傷)**が生じるリスクが極めて高いとされています。
その影響は、心と身体の両面に現れます。

身体のサイン

  • 原因不明の頭痛・腹痛
  • 不眠・悪夢・食欲不振
  • 遺尿(おねしょ)・赤ちゃん返り

心の傷・トラウマ

  • 自己肯定感の極端な低下
  • 「自分が悪い」という自責感
  • 人間不信・対人恐怖
  • 突然のフラッシュバック

これらは成長とともに自然に消えるものではなく、適切な支援がなければ長期化する可能性があります。


3.教育・保育現場特有の「裏切り」の構図

教育・保育の現場は、児童にとって安心できる場所である一方、
「支配性」「継続性」「閉鎖性」という特質を併せ持つ環境でもあります。

このような環境では、加害者が児童から寄せられる信頼と、自らが持つ立場や権力を濫用し、巧妙に加害に及ぶ構図が生じやすくなります。

特に深刻なのは、信頼していた大人から裏切られるという体験です。
これは児童に「誰を信頼すればよいのか分からない」という感覚を残し、その後の人間関係の構築に大きな支障をきたす要因となります。


4.長期化・潜在化する苦痛の現実

被害を受けた児童は、混乱や恐怖、強い羞恥心から、被害を相談・開示することが非常に困難な状況に置かれます。

「過去をなかったことにできない悔しさ」
「自分が汚れてしまったかのような絶望感」

こうした感情を、誰にも打ち明けられないまま抱え続け、生涯にわたって苦しむケースも少なくありません。
被害から数年、あるいは数十年が経過してから、ようやく語り始められることもあり、性暴力の影響は一生涯続く可能性があるという現実を直視する必要があります。


5.潜在化を助長する特性への配慮

性暴力被害は、特定の児童において、より一層表面化しにくい傾向があります。

男児の心の声
男児の心の声

男なのに被害に遭うなんて、恥ずかしくて誰にも言えない……

複雑な家庭環境の子
複雑な家庭環境の子

先生を訴えたら、僕の居場所がなくなっちゃうかもしれない

障害のある子
障害のある子

(うまく言葉にできない不安や恐怖)

これらの特性を理解しないままでは、被害は見過ごされ、長期化してしまいます。


6.結びに:専門家によるケアと「被害児童ファースト」の徹底

性暴力によって生じた深刻な症状であっても、専門家による適切で中長期的なトラウマケアによって、緩和が可能であるとされています。
そのためにも、早期の気づきと、被害児童に寄り添う姿勢が欠かせません。

事業者が持つべき覚悟 性暴力を単なる「経営リスク」として捉えてはいけません。 それは、一人の人間から尊厳を奪う**「生涯にわたる重大な人権侵害」です。 私たちは常に「被害児童ファースト」**を貫き、彼らが安全を取り戻せる場所を作らなければなりません。

Q
こどもが「先生のことが好き」と言って近づいてきた場合はどうなりますか?
A

それでも性的な接触を行えば「性暴力」となります。こどもは大人への憧れや依存心を「恋愛感情」と混同しやすく、大人はその未熟さに乗じてはいけません。いかなる場合も、大人が境界線(バウンダリー)を守る責任があります。

Q
「スキンシップ」と「性暴力」の境界線はどこですか?
A

業務上必要のない身体接触や、プライベートな空間での接触は不適切です。「こどもが嫌がっていなかった」ことは免罪符になりません。客観的に見て保育・教育の目的を逸脱している行為は、性暴力やその予兆とみなされます。

Q
男性保育士が、男児の着替えを手伝うのもリスクになりますか?
A

業務上必要な介助であれば問題ありません。ただし、「男同士だから大丈夫」という思い込みは禁物です。男児に対する性被害も多発しているため、死角を作らない、複数人で対応するなど、透明性の高い環境作りが求められます。

日本版DBSの対応、「うちの場合はどうなる?」と感じたら

日本版DBS(こども性暴力防止法)は、施設の種別・運営形態・職員体制によって、必要な対応が異なります。

保育園・認定こども園・障害福祉施設といった義務対象施設ははもちろん、スポーツクラブ、学習塾などの認定対象事業所でも、「どこまで準備すればよいのか分からない」という声を多く伺います。

  • 就業規則やマニュアルは、このままで足りるのか
  • 研修や演習は、どこまで求められるのか
  • 自園・自施設の運営形態で、注意すべき点はどこか

施設ごとの状況に応じた整理が必要な段階です。

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