※この記事はこども家庭庁が公表しているこども性暴力防止法施行ガイドラインを元に作成しています。
あわせてこども性暴力防止法の概要も合わせてご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案については、必ず専門家へご相談のうえご判断ください。
はじめに|「どこまでが性犯罪として照会されるのか?」
日本版DBS(こども性暴力防止法)について、多くの事業者の方が疑問に思われることのひとつが
「どのような前科・犯歴が、実際にシステムで照会されるのか」
という点です。
結論から言えば、日本版DBSで照会対象となる**「特定性犯罪」**の範囲は、一般に想像されているよりもはるかに広く設定されています。
対象は、いわゆる重大な刑法犯に限られません。**都道府県条例違反(痴漢・盗撮等)や、令和5年に施行された撮影罪(盗撮)**も含め、こどもを守る観点から、性暴力につながり得る過去の記録が網羅的にチェックされる制度です。
本記事では、日本版DBSで「犯歴あり」と判定され得る特定性犯罪の範囲を、実務目線で整理します。
対象となる罪①|刑法犯(重大な性暴力)
まず、日本版DBSの中核となるのが、刑法に規定される重大な性犯罪です。ガイドライン案では、次の罪名が明確に対象として示されています。
- 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪
※刑法改正前の「強制性交等罪」「強制わいせつ罪」等を含みます。 - 監護者性交等罪・監護者わいせつ罪
親・養育者・保護者など、優越的立場を利用して行われる性暴力です。 - 面会要求等罪(刑法182条)
16歳未満の者に対する、わいせつ目的の面会要求や、いわゆる**自撮り要求(性的姿態の影像送信要求)**が該当します。 - 強盗・不同意性交等罪
強盗行為に伴って性暴力が行われる、極めて悪質な犯罪です。
いずれも、こどもに対する支配性・侵害性が高く、日本版DBSでは当然に照会対象となります。
対象となる罪②|特別法(デジタル性犯罪・児童ポルノ)
刑法以外の法律で処罰される性犯罪も、日本版DBSの照会対象です。特に、近年強化されている分野が含まれます。
- 児童ポルノ禁止法違反
児童買春、児童ポルノの製造・提供・所持、周旋・勧誘など - 撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)
令和5年施行の新法に基づき、次の行為が対象となります。- 盗撮(性的姿態の撮影)
- 性的画像・映像の提供・保管
- SNS等での送信
- 児童福祉法違反
一般に「淫行」と呼ばれる行為です。
デジタル環境下で行われる性加害も、再犯性・拡散性の高さから、厳格にチェックされます。
対象となる罪③|都道府県条例違反(痴漢・盗撮等)
実務上、特に見落とされやすいのが条例違反です。
日本版DBSでは、各都道府県の
- 青少年健全育成条例
- 迷惑防止条例
などに基づく処罰歴も、一定の類型に該当する場合は照会対象に含まれます。
政令で定められている対象行為類型
次の行為を罰する条例違反が対象とされています。
- みだりに身体に接触する行為(痴漢など)
- 下着や身体ののぞき見・盗撮行為
- 卑わいな言動(言葉による性的嫌がらせ等)
- 児童に対する性交・わいせつ行為(いわゆる淫行条例違反)
「刑法犯ではないから軽い」「条例違反だから関係ない」という整理は、日本版DBSでは通用しません。
改正前の法律・旧罪名も照会対象
性犯罪分野では、法改正により罪名や構成要件が変更されることがあります。
日本版DBSでは、
- 改正前の刑法
- 改正前の条例
に基づいて処罰された記録も、すべて照会対象となります。
現在の「不同意性交等罪」だけでなく、過去の
- 強姦罪
- 準強制わいせつ罪
といった旧罪名での処罰歴も、システム上は連続して照合されます。
まとめ|日本版DBSは「条例違反も含めて」確認する制度
日本版DBS制度では、
「条例違反だから軽い」
という考え方は採られていません。
痴漢や盗撮、言葉による性的嫌がらせも、性暴力へと発展するリスクを示す重要な指標として扱われます。制度の目的は、処罰の重さではなく、こどもに対する性暴力を未然に防ぐことにあります。
事業者の皆様におかれましては、
- どのような犯罪が照会対象となるのか
- 結果が返った場合に、どのような判断・配置・対応が求められるのか
を、制度施行前から整理しておくことが求められます。
日本版DBSは、「知らなかった」では済まされない制度です。網の目が細かく張られていることを前提に、いかなる性暴力も許さない姿勢での制度運用が不可欠だと言えるでしょう。
- Q法改正前の「旧罪名」で処罰されている場合はどうなりますか?
- A
照会対象となります。日本版DBSでは、現在の罪名だけでなく、
- 改正前の刑法
- 改正前の条例
に基づく処罰歴も含めて照会されます。たとえば、現在の「不同意性交等罪」に相当する、過去の「強姦罪」「準強制わいせつ罪」なども対象です。
- Q撮影罪(盗撮)は、いつからのものが対象になりますか?
- A
撮影罪は、**令和5年に施行された「性的姿態撮影等処罰法」**に基づく犯罪ですが、
- 法施行後に処罰された撮影罪
- 施行前であっても、当時の法律や条例に基づき処罰された盗撮行為
いずれも、日本版DBSでは連続した犯歴として照会対象に含まれます。
- Q罰金刑や略式命令だけの場合でも、照会に引っかかりますか?
- A
処罰内容が罰金刑や略式命令であっても、対象となる罪名・行為類型に該当していれば、照会対象から除外されることはありません。
日本版DBSは「刑の重さ」ではなく、性暴力リスクの有無を確認する制度である点が重要です。
- Q痴漢や盗撮などの条例違反も、本当に日本版DBSの照会対象になりますか?
- A
はい、対象になります。
日本版DBSでは、刑法犯に限らず、政令で定められた一定の類型に該当する**都道府県条例違反(迷惑防止条例・青少年健全育成条例等)**も、特定性犯罪として照会対象に含まれます。
痴漢行為や盗撮、卑わいな言動などは、性暴力へ発展するリスクを示す行為として重く位置づけられています。

